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ファッションクロス特集 No.2

− クリエーター活動報告 「パターン・サンプル製作会社見学」 −

今回は、4人のクリエーターさん(レディース(2名)、メンズ&レディース(1名)、靴&バッグ・小物(1名))と一緒に、西区にあるパターン、サンプル等を製作している(株)タキヒヨーテクニーさんにお邪魔して、現場でのお仕事の様子を見せていただきながら、クリエーターさんたちの要望・意見を直接、スタッフの方々にもお聞きいただいて、今後のビジネスにつなげていく道を探ってきました。

日時:2006年4月19日(水)15:00〜17:00
会場:(株)タキヒヨーテクニー
名古屋市西区新道2丁目5−9 朝日生命明道町ビル4F
内容:1.企業のものづくりに対する特徴と業務内容の説明
   2.会社見学
   3.会社スタッフとフリーディスカッション
講師:(株)タキヒヨーテクニー 代表取締役社長 安藤 賢司
参加者:(株)タキヒヨーテクニー 千田 錦蔵/米本 由美子/永田 由里子  
    h2y 花房 由美子
    WILLGIBB 橋本 隆文
    Fosseta Barba 岡野克俊
    Voz 野間文圭実

*ものづくりに対する特徴と業務内容について

『はじめに…』

安藤:
今日は、会社紹介ということもあるけれど、これからお付き合いを始められたらということでご参加いただいていると理解しています。
まずは、こんな会社もあるということで聞いていただければと思います。申し遅れましたが、私は社長の安藤と申します。よろしくお願いいたします。

 

『会社の成り立ち』

 

安藤: うちの会社は昭和57年3月に設立されて、今年で25周年を迎えています。以前は西区の笠取町にタキヒヨーの縫製工場としてタキヒヨー被服というのがありました。町の真ん中に工場があったのですが、その工場のパターン部門が独立したのが私たちの会社です。そのため、ずっとタキヒヨー本社の仕事をやってきました。
しかし、バブルがはじけて、ここ何年と不況が続いている中で、どの企業も海外戦略を進めて、そのため国内の縫製工場はどこも厳しい状況になっています。5年前にはタキヒヨー被服もなくなり、縫製部門なしのパターンとグレーディングパターン、そしてサンプルのみを作る会社として今はやっています。
ここでかかってくるコストというのは、デザイン画からパターンを起こして、サンプルを作るという、展示会前までのコストと、生産が決まってからのグレーディングパターンのコストに分かれるわけで、ここではいずれにしても人件費が一番大きな部分を占めています。コストを明確化するということで、縫製工場から分離したわけですが、ここはまさしく「アーバン工場」…一品一品が違うものでも対応できるし、大量生産のものではなく、巷にないような商品こそ得意中の得意。これからはサンプルの延長として、一品一品作るものをやっていきたいとも思っています。

 

『会社の組織と仕事の内容』

 

安藤: この4階と3階はパターンナーのいるところで、今は23名くらいいます。お客様は、タキヒヨー本社を含め名古屋市内、岐阜、東京…主なところが6社くらい。百貨店あり、量販あり内容はさまざまで、ブランドを立ち上げてこれからやっていきたいというので、半分投資と考えてやっているものも1件あります。
2階は、都市型工場ということで、サンプル部門を置いていて、プレスもミシンもひととおりの機械がそろってます。人も7人配置して、クィックレスポンスへの対応も可能となってますね。生産が決まった後のグレーディングにも対応します。これで、総勢で36名の体制となっています。
我々の基本は、美しく、着やすく、縫いやすく、パターンを作ること。もともと工場の併設だったので、工場が困っていること、やってほしいと思っていることを考えながら、パターンを作ってきたわけです。縫いやすい、きれいに上がる、工場の工程にあわせたパターンを作り、パターンからサンプル、そして生産パターンまで一環してやれるように、20数年やってきました。昔の手作業から、今はパソコン…アパレルキャドを中心に使いこなしています。10年くらい前からパターンメイキングはパソコンになってて、パターンナーは全員アパレルCADを使っていますね。こういう仕事は、「1点当たりいくら」が決まっているわけで、当然、標準単価があって、そうなると機械化が必須となってくるわけです。また、機械化の特徴は、こういう人の出入りの激しい業界で、データの蓄積ができること。会社の財産である「情報」の整理・保存ができる、これはとても大きい…。それともう一点、データ化することによって、海外の工場でも、どこでも、インターネットで即送信できてしまう。今の時代、相手が遠い、近いは全く関係ない。これからもこの傾向はどんどん加速していくと思います。機械が使えて、コスト的なことも考えながら、やっていかないとダメってこと。うちの規模は、この業界では大きい方なんで…普通、サンプル工場というと多くて7〜8名。小さいと2〜3名。うちの場合、大きいだけに固定費が高くなってしまうんですね。そうすると、いかに作業量を確保するか、作業時間を短くするかしかない。採算がとれなければ人を減らすことになってしまうが、パターンナーは一人前になるのに10年近くかかるので、簡単には減らせない。技術の蓄積が難しい、しかも、パターンナーの多くは女性のため、サイクルも短いんでよけいに難しい。時代の変化、内部の固有の変化の中で、お客様の要望にどう応えるかが重要。去年は苦戦した。世の中の早い流れに対応しきれない。お客様の動きがとても早い。遅れると受注がとれなくなる。今年は、それを解決するために、受注の方法を変えてみた。各社を回って「お願いします」ではダメで、今は特色を出していく必要がある。リーズナブルでよい品質、そしてスピードをあげることが何より必要ってわけ。
ただ、今は高齢化が進んでいて、こういう工場ではなかなか後継者が育っていないんですね。国内に人材がいない、それが心細い。ファッションの世界の表の華やかさに比べると我々の舞台は本当に厳しい。

 

『タキヒヨーテクニーの特色』

 

安藤:
うちの会社の特色は、なんといってもベテランの社員が残っていること。丁寧な形でつくる「ものづくり」が一番の特色。経験のある社員が残っているので、いろいろなものに対応できる。
業務フローとしては、お客様サイドの企画立案があって、企画をいただくとそれをスタイルシートに落とし込み、そこからデザイン、サンプル、工場パターンへと流れていきます。
ここにあるトワルを見てもらうと、縫ってあるものと、ピンうちのみのものがある。縫ってあるものは実際に着てみて、動きを見て、修正の指示がデザイナーさんから出されます。これを踏まえて、パターンをつくりあげ、これをベースにサンプルを作っていく…サンプルの仕様書を作っていくという流れになります。
ただ、量販用ではパターン代がかけられないので、半分のトワルとか、ピンうちのトワルになる。量販では5分の1のコストしかかけられない。
こちらとしてはパターン代に合わせた内容でやっていくことになる。こういうトワルを作ってということになると、ジャケットで5万円前後の商品で、パターン代が4万円くらいというものになる。あとはロットによるので…。
サンプルを作成する際には、サンプルチェック表を作って、これをサンプルと一緒に納品することになる。うちの場合、カウンター見本までやっているが、これはそのまま商品。
商品を作る場合、安いものだと、パターンはパターン、サンプルはサンプルでそれぞれ安いところへ別々に出して、使い分けしていくところが多い。うちのように全体を通してみているところはどこにもない。パターンを作ればいい、ものを縫えばいい、というものづくりが横行している。こういうふうにバラバラになっていると、デザイナーがこれをしっかり把握していればいいが、デザイナーの力量による。スケジュールはどんどんタイトになってきているし、時間も、土日も関係なく対応しないとダメということで、荒っぽい商品になりがち。やはり、こういうやり方ではなく、頭からおしりまで知るべきだと思う。
去年から百貨店商品のサンプルチェックをしている。その上で商品の作りがどうなっているのかを見て、よくなければどうすればいいかを見ながら商品を作っていく方向へということでやっている。やりっぱなしではなく、生産も踏まえた形でやっていく。負担は重いが、そういう部分でものづくりをやっていきたい。あくまで、人の技量、能力を生かせる会社でありたい。設備等もあるので、この業界が賃金的に恵まれているわけではない。儲けることが大切だが、利益を出すためにも、特色をもって、使ってもらえるところで使ってほしいと思っています。

 

*工場見学

安藤社長さんのご案内で、4階から2階まで、各フロアーを見学。アパレルCADや生地の裁断機等を実際に見せていただきました。

 

*質疑応答

『生産工場の現状は?』

 

安藤: 生産工場については、量販の工場は国内には 無い。一方、百貨店では今も国内の方が多いという状況になっています。ただ、百貨店から請け負ったところがさらに海外に出しているというケースはあると思う。サンプルを縫ってもらうところを探すのも大変だと聞いているので、みなさんはそのあたり、自分で縫っているのか、他の人に依頼してるのか?どうですか?

 

『参加者の活動紹介』

 

花房: 展示会シーズンになると、やはりやってもらう人を探すのはとても大変です。

 

安藤: できないと言われたらおしまいだからね。うちも、今は企業の方がなかなかデザインとかが決まらなくて、ギリギリまで待たされて、そのために全てのしわ寄せがここに来る状態になっている。その反面、仕事がない時期には全くないということになる。山と谷があって、しかもこの谷の時期が長くて、山がぐっと高くなってる感じ。一時集中で、土日や連休とかがまるでなくなってしまう。展示会はだいたい、連休明け、夏休み、盆明けとかに設定してあるので、この時期がとても大変。

 

安藤: ところで、このあたりでみなさんが具体的にどんなお仕事をやってみえるのか教えてもらえますか?

 

岡野 : オリジナルで靴を作っています。洋服のことはよく分からないけど、いろんなデザインをすることに興味があるので、今回は勉強させてもらおうと思って参加しました。靴はデザインをしてパターンを作って、木型の原型も、靴そのものも全部自分で作って、売るのも自分でやっています。

 

安藤: 靴もやはり流行とかあるの?

 

岡野: 流行もあるけど、それに乗っからないものを作っていきたい。特にレディースは流行があって、ヒールものとかは流行が明確だけど、自分はクラシックなものを作っているので、あまり流行に左右されない。

 

安藤: こういうものはコンピューターを使うといいかもしれない。デザイン設計も含めたものがあるらしいので…。うちの場合はこういう硬いものではないので、かなりイメージが違うけど…

 

岡野: 靴だけでなく、いろんなものをデザインしていきたい。バッグや小物もやっている。バッグは独学なので、なんとも言えないけど…。

 

安藤: タキヒヨー本社は雑貨も扱っている。通常、ブランドものにはバッグや小物もくっついているので…

 

橋本: 自分は洋服が中心。主に、はん布と革を使って、綿とレザーのコーディネートで洋服を作っている。

 

『小ロット生産について』

 

橋本: 問題はロットが少ない場合。デザインものをセレクトショップで販売してもらっている場合は、展示会中心で発注をもらっているのだが、そのときのロットが少ない。セレクトが対象のため、どうしてもそうなってしまう。テクニーさんのシステムを見せてもらって、自分のところにないものが全て揃っているので、びっくりしている。これを、私たちにも利用させてもらえたらと思う。でも、さっきお聞きしたコストはちょっと厳しい。もう少しコストを安くするにはどうしたらよいか? それとメンズのラインについてはどうか? を教えていただけたらと思う。今、自分のところはパターンは自分で作って、サンプルは東京の方に依頼、製品は縫製工場へとバラバラでやっている。これを一環してやってもらえたらとっても嬉しい。

 

安藤: 小ロット生産をどうするか…みんな困っているところだと思う。どうしてもコストが安いためにあわせられない。現状として30枚、40枚までの小ロットに対して、量産のコストで言ってくる。去年は、手すきのシーズンでこうしたものをやったことはある。欲しい時にと言われると、かなり難しい。時期をずらしてということなら、値段的には対応もするつもりはある。ただ、普通は採算のとりにくい部分ではある。

 

橋本: 閑散期というか、手すきの時期はいつごろですか? コスト的にはどれくらいですか?

 

安藤: 今は、できるだけ空けないようにしている。これから詰めてみないと、いつ空いているとかのはっきりしたことは言えない。コスト的に低く抑えるためには、外に回すことはできないので、全て中で処理しないといけない。そうすると1日3着のレベルになってしまうので…。コスト的には、サンプル作成の場合、普通ジャケットで7,000円から8,000円、量販だと4,000円くらいかな。ただし、うちは婦人しかやっていないので、紳士ものはまた違ってくると思う。紳士は女性のようにパターンが細かくなっていないので、縫う方のテクニックに寄っている部分がとてもある。紳士の業界では通用するパターンが婦人の業界では通用しない。

 

橋本: 今後、コスト的なところもクリアできて、時間的な余裕があれば、ご依頼することは可能ですか?

 

安藤: 婦人なら可能性はあると思う。

 

『パターン製作について』

 

花房: 以前は自分で縫製までやっていたけど、最近は外注にパターンや縫製を出したりしている。パターンがあまり得意ではないので…。ただ、自分の場合、一点もののオーダーが多いので。

 

千田: うちの会社ではブランドごとに原型がある。オーダーの場合、原型をどこからもってくるかでスピードも違うし、オーダーでも型が決まっていれば早くなる。オーダーのお客様が決まっていて、ボディが決まっていれば早くできる。

 

花房: 今はお客様のサイズをとって、自分でパターンを起こしている。オーダーされる方は、サイズ的にかなり大きかったり、標準サイズからかなり違う方も多いので…。

 

千田: 毎年このお客様なら何着のオーダーがあるとかいったことが分かっていれば、それを元型にして、CADに入れて、そこにデザインを落とし込むことが可能だと思う。
ノーマルなデザインなら、パターンは難しくないと思うし、しっかり原型をとっておけば、仮縫いの必要もなくなる。

 

花房: 展示会にも出しているし、今後は展示会での受注のようなことも考えていきたいと思っている。

 

安藤: 一人でなにもかもやるのは大変。それでビジネスとして成り立つのか? 単価が高いのか、リピーターが多いのか?

 

橋本: 一人でやっているから何とかビジネスとして成り立っているんだと思う。

 

安藤: それだとパターンも縫製も、営業もできないといけないわけだね。

 

橋本: 自分としては今は営業に回りたいので、縫製に時間をとられたくないというのが本音。

 

安藤: 自分のものづくりが表現されていれば、縫製とかは外注でもいい。

 

橋本: ただ、シーズンごとに縫う人が変わると、ものづくりが変わってしまう。一つの会社で一人の人でやってもらうのがベスト。

 

『縫製について』

 

野間: ヴォズというブランドでサクラアパートの中でショップをやっていたんですけど、今日引っ越しました。

 

安藤: HPも見せてもらいました。

 

野間: 最初はアパレルの重衣料の方にいたんですが、自分のデザインした服が売りたいということで、一人で始めました。これからは展示会でお客様をつけていきたいと思っているんですけど、今は1つの型で5〜6枚くらいしか出ないので…。自分は縫製が得意でない。ただ、型紙は自分でひいている。

 

安藤: うちはパターンからサンプル、サイズ展開まで一環していける。

 

野間: やはり気になるのはロット。

 

安藤: うちはサンプルが基本なので、実際のところ1枚からが基本。

 

永田: 2〜3枚くらいなら大丈夫だと思う。

 

野間: 私の場合、デザインが面倒くさいとよく言われるんで…。1枚からやってもらえたら本当にうれしいんだけど…。やっぱりコストが問題。

 

安藤: 具体的なビジネスの話になれば、いくらまでなら出せるといったところで交渉していくことになると思う。

 

橋本: 具体的なお話になったら、そういった見積りは出してもらえますか?

 

安藤: 料金はものの状態を見て、内容によって全て違ってくる。つきつめれば、時間いくらの世界なので、同じジャケットでも、特別仕様は別途コストがかかるし、それぞれ違ってくる。

 

米本: ブラウスとかだと、サンプル1枚8,000円くらいが目安かな…?

 

安藤: いずれにしても接点というか、お互いにうまくやれる部分がありそうな気がする。コストも合わない、量も少ない、それで皆さん困っている。究極は1枚。うちは1枚が基本なので、そういうことを加味すると、お互いの接点はありそう。

 

野間: 量産というのはどれくらいのレベルのお話ですか?

 

安藤:

同じ型で5枚から。この場合、少しのディスカウントはあり得る。

 

永田: 5枚が同じサイズで、色も同じなら、裁断も早くなるし、手間も少なくてすむ。縫製も流しで縫えるので早い。考慮の余地はあると思う。ただ、縫う方は同じ色、同じ型だと、正直飽きてくるけど…。だから、色とかが違っていた方がうれしい。流しの工程に慣れている人はいいけど、やっぱり少々ロットの方がありがたい。個人的には、変わったデザインで、大量生産のことを考えなくていい仕事は楽しい。手を使ってやってもいいし、デザインした人とのやり取りもあったりしての仕事は自分にとってはやりがいがある。実は、今も1箇所やっているので…。時期的に少しゆとりのある時に、こういう仕事ができると本当にうれしい。ただ、展示会が終わってからといっても、実際に空くのは1週間、2週間なので結構きついけど…。

 

安藤: 空いたところでやってよと前倒しで持ってきておいてもらえば、1枚、2枚なら、合間を見てやれる。これが数がまとまるとそういうわけにもいかないので、かえって1枚、2枚の仕事の方がどうとでもなる。
ま、今日はこんなところで、なかなか接点が見つからないといえば見つからないが、どこかにありそうな気もする。具体的なビジネスの話はまた個別でさせてもらうということで…。

 

全員: どうもありがとうございました。

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