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ファッションクロス特集 No.5

− 『靴』業界のマーケット事情とこれからのモノ創りへの導き −

今回は、「靴デザイン・クラフトスクール(主催:名古屋靴工業協同組合)」との共催で、今やマーケットや合同展示会で大人気の小物『靴』にスポットを当ててみました。神戸で靴のアドバイザーやブランディングを手掛けている「シエテオフィシナティー」の高橋さんをお招きして、レクチャーとディスカッションの場を設けました 。
会場はナディアパークに程近いm's collectionのcafe。参加者の皆さんも自らの作品を持ち寄って、高橋さんのアドバイスに期待が高まります。 靴を通して、これからのクリエータービジネスの戦略について何かヒントが得られたかな…?

日時:2006年10月27日(金)18:00〜20:30
会場:m's cafe(エムズ カフェ)
名古屋市中区栄三丁目12-19 エムズビル1F
講師:siete oficina_t(シエテ オフィシナ ティ)代表者 高橋裕二氏
参加者:靴を中心とした職人&学生及び ファッションクリエーター30名


*まずは高橋さんのプロフィール

『今、やっていること…』

高橋:
まずは今、何をやっているか…お話しようと思います。
最近、アパレルブランドを持っている大手の会社でも雑貨のウエイトがとても高くなっているんです。本気で靴やバッグにちゃんと取り組んでいこうという感じで、プロジェクトを立ち上げている。でも、もともとアパレルの会社なので靴とかの専門的な人がいなくて、それで一緒にやらせてもらっているんですね。
あとは靴のメーカーさんも今とっても苦しくて…その中に入ってコンサルティングやプランニングの仕事をしています。
また大手のスポーツブランドでアスリート系ではなくて、もう少しファッション的な分野を開拓したいということでお声がかかったり、大手アパレルが靴のブランドを専門店向けに立ち上げるので、そのお手伝いをしたりといった感じです。
さらに神戸には皆さんもご存知のように、長田という靴の産地があるのですが、ここに第三セクターのシューズプラザという会社があります。神戸市の支援を受けて、今、シューズネットを立ち上げるための相談を受けているところです。
もう一つは、若い人たちが靴に興味を持ってくれて、いい靴を作りたいという人たちがいっぱい出てきているんですけど、なかなか出て行く場所がない。それで、神戸市の支援を受けて、来年はIFFに出展してみようということになっていて、近いうちに海外にも出していきたいとがんばっています。

 

『靴へのかかわり』

 

高橋: では、なんで靴にかかわったか?
特別に靴に興味があったわけではないんです。たまたま学校を卒業して、レディスの靴のチェーン店に入った。当時はブーツブームの後のちょうど悪い時期で…神戸の支店に配属されて、ここで地場産業と出会いました。バイヤーとしてメーカーや卸にいろいろと注文をして、あんな靴作ってよとかここはこういうふうにしてよとか、そんなことをしているうちに、「そんなら自分で作ったら」なんて言われて、それで会社辞めてメーカーに入ったんですね。
企画と営業をやりながらもっといい靴作りたくって…神戸はケミカルシューズが中心で、どうしても浅草と比較されちゃう…。でも、ブランドのエルやクレージュ…ちょっと昔って感じかな?…も手掛けたし、OEMも始めて、バニスター、卑弥呼や、カムイなどもやった。ピーク時には20億円くらいまでいったんだけど、なんだかおもしろくなくなってきて…なんでかなぁ…?
結局、OEMをやっているとデザインも材料も相手に言われるままで、とにかく安く早く質のいいものを作ろうよって言っているうちに、知らず知らず靴への愛情がなくなってきて、「もっとこうしたらいいよ」みたいなことをみんな考えなくなっちゃった。こんなふうにしたのは俺だなぁって思って、それでもう一度、一からやりなおしということで、3年前に独立しました。それで、中国、イタリア、海外のものを見ながら3年間過ごして、いろんな人からのリクエストもあって、それを仕事にしている。今、一番楽しい時期かな…。
靴は奥行きがあって難しい世界ではあるけど、長く楽しめる世界だと思っているんで、是非、若い人にも靴業界に入ってほしいって、これが今の思いです。

 

*靴マーケットの現状

『今、靴のマーケットはどうなっているか。』

 

高橋: みなさんも、ある意味消費者なので、靴マーケットの現状はよく分かっていると思います。
かつての靴業界の中で靴は靴屋さんで作る、靴屋さんで売る。靴メーカーがあって、靴卸があって、専門店があるという時代から、今度は百貨店に移行していって、今はどうなっているかというとアパレルの雑貨比率が高くなっているんです。それで靴はいろんな人が扱う。靴のことが分からない人が販売するケースも多くなって、靴専門店で買うというのがなくなってきている。それで日本の靴業界はとても悪い状態になっている。大きな産地の浅草も景気悪いし、長田も悪い、人も減って生産量もどんどん減っている。
靴というのは浅草や長田だけじゃなくて、佐賀にも運動靴の産地があるし、静岡にもある、実は名古屋にも靴作っている人たちがいるっていうのは、このお話を受けるまで知らなかったんですけど、調べていくと全国いろんなところで作られているんです。どこでないといけないということが全くなくて、本当にいろんなところで作られているんですね。

 

『ファッションの中での靴の位置づけ』

 

高橋:
そんな中、アパレル関係の靴のウェイトがあがってきている。ビッグブランドの中でも雑貨比率が30%、その中の靴が25%という感じで、雑貨には靴のほか、バッグやベルト、手袋などがあるんですけど、ファッションの中で、スタイリングという観点からは靴の重要性、存在感が年々高まってきている。
雑誌の掲載率を見てもよく分かるんですけど、靴がとてもよく取り上げられるようになっている。
インポートブランドでもスペインやイタリアのとっても小さなブランドまで、どんどん取り上げられているんです。しかも価格的にも6万、8万、10万と高価になっている。
でも、こうしたラグジュアリー感のある市場の拡大が、日本の産地に恩恵があるかというとそうはなっていない。世界のラグジュアリー系ブランドの中でも、ヴィトンやグッチ、プラダ等、靴の展開率が上がっている。彼らと話していると、いかに靴が大切か、靴が決まらないと服が決まらないとまで言うんですよ。特に秋冬、ブーツを決めないとスカートの丈が決まらない。それくらい靴は今注目されている。そういう意味でも本当におもしろい分野の一つなんです。
ただ、現状では先ほどもお話したように日本のメーカーは完全にOEM生産になってしまっている。その中で、ショップを持っているブランドは強い。カネマツやダイアナ…こういうSPA系のブランドは頑張っている。しかし、卸系のブランドは難しい。要は、ファッションとしてトータルに見せられないと、靴の存在も認知されないようになっているんです。

 

『靴の作り手の状況』

 

高橋: そんな中、作り手はどうなっているか。各ブランドにはそれぞれデザイナーさんがついているので、彼らの持ってきたデザイン画や素材に従ってただ作るだけになっている。 安く、早く、品質良くとこの三原則で注文はとれる。OEMをやっていれば注文はとれる。ところが、段々にポイントも下げられて、小ロットになってきて…。
これまでどうやって利益を上げてきたかというと、大量に、たくさんのものを均一に作って流すことによって利益を上げてきたわけで、これが小さくなって、正反対のことになってきて、それで、バタバタと倒れていく。

 

『マーケットインからプロダクトアウトへ』

 

高橋:
これからはマーケットインではなくて、プロダクトアウトの時代になってくる。まだまだ現状はマーケットインの市場が強くて、「色が落ちたらダメなので合皮を使って」「雨でしみになったらクレームになるのでタンニン系の素材は必ず色止めをして」「ヒールが一つでも折れたら全品回収になるからお願いしますよ」と、こういうことばかり何年もやってきたために、特に百貨店の靴がとても劣化している。
クリエイティブ性がなくて作り手のモチベーションがあがらない。価格だ安全性だ、リードタイムだということばかりで、日本の靴業界のレベルが低くなってしまった。 マーケットインが強いのは日本が一番顕著で、イタリアやスペインはプロダクトアウト型。作りたいものを作って消費者にぶつけていく。良いものは受け入れられるし、受け入れられなければ、またトライすればいい。クリエイティブな世界をまだまだやっている。ここで、日本は差をつけられているんです。
一方、アジア系の生産も顕著。中国は安いと思っているかもしれないんだけど、それはもう違っていて、中国工場の設備面とかの現状を見たら、もう日本は太刀打ちできない。技術やクオリティでもとても勝てないレベルになってきている。ただ、中国はOEM生産なので、こういうものを作ってほしいという注文にはきっちりと応えてくるんですが、ソフトの部分はもっていない。
私は、東京は世界でも最高のファッション都市だと思っています。イタリアは20年前も30年前も全く変わらない町。建物が壊せないので、どう残すかという中で文化を創っている。逆に東京は半年で道が変わる、町が変わる。日本ではどこの都市でも壊しては作りなおしの繰り返し。全てを捨てて新しいものを創り出す。デカダンス的な意味では究極のファッション都市と言えるのではないかと…そこに凝縮したソフトの中で育っている若い人たちの感性は、すごいはずだと思うんですね。世界に出て行くだけの潜在的な創造力を持っている人たちがいっぱいいるはずで、これから靴にかかわる人にとってのチャンスは、こういうところにあると思ってるんです。

 

『アパレルの靴』

 

高橋: もう一つ、アパレルの靴の問題点がここにはっきり出ているんですね。アパレルは在庫管理がしっかりしている。サイズは3サイズくらいしかやらない。ニーズの多い23cm、23.5cm、24cmのみ。靴は消化率も悪いし、ストック場もすごくいるために一番儲からないもの。しかも危険度も高い。洋服やバッグで怪我をすることはほとんどないけど、靴はヒールが折れれば怪我をする。しかもアジャストしないとダメ。50足入れて、30足売れたとしても、売れたのが23.5cmばかりだとすると残りの20足はサイズの関係でさらに売れにくくなる。となると、これで追加発注すると在庫負担がさらに高くなる。
要するに、靴はファッションの側面だけでなく、機能の要素がとても強くて、ファッションだけでは語れない部分があるんですね。これからの靴の世界は、ちょうど変革期にある。アパレルさんが靴もバッグもちゃんとやろうとしているけど、現状では体制が整っていないわけで、そんなとこからも靴業界はここ2〜3年で大きく変わっていくと思うんです。

 

『靴を取り巻く変化の方向』

 

高橋: さらに名古屋もそうなんですけど、大阪も東京も靴の学校が増えている。ファッションスクールでも靴の学科が増えている。受け入れがないにもかかわらず、靴の勉強をする人が増えている。こうして靴に興味を持って、かかわりたいという若い人が増えてきていることは業界にとっても、とてもいいことだと思っています。
また、一方で、靴を扱いたい、売りたいという人もいっぱいいる。店をやっているが、自分のイメージのショップを創りあげるために、どうしても靴がほしい。でもロットが大きすぎて買えない、という悩みをかかえる人も多い。またネットで靴の販売をやりたいけど、どうしたらいいか分からないという人もいっぱいいる。クレームの処理もあるし、靴のルールが難しくてよく分からない。靴を作りたい人、靴を売りたい人、どちらもいっぱいいるのに、うまくつながっていない。そうした側面からも、ここ数年が、靴業界が破壊されながら、組み立て直されていく時期になると思います。

 

*クリエーターのやるべきこと

『クリエーターの状況』

 

高橋:

そんな中でクリエーターとして皆さんの中にも、靴を作りたい、靴をデザインしたい、靴を売りたい…といろんな人がいると思う。靴はパーツがとても多い。靴のデザイナーになりたい人、自分で作って自分で売りたい人、いろんな人がいると思うけど、東京の学生さんのデータを拾ってみたところ、やはり自分で作って自分で売りたいという自己完結型の人が増えていると聞いている。

でも、ビジネスとして成立させるのはとても難しい。靴で生計を立てていくためにはお金を稼がないとだめだけど、靴は生産が必要になる。そのためには資金力や活動拠点が必要になる。ラスト一つ作るのにもお金がかかる。材料もなかなか売ってもらえない。中底はどうしたらいいか、加工はどこでやればいいか、どこで何をどう手に入れたらいいのか…靴はとても大変。

 

『靴の世界でのネットワークづくり』

 

高橋: それじゃ、どうしたらいいのか? ネットワークが必要。靴がおもしろいのは今も職人文化が残っていること。浅草にも神戸にも残っている。そのためにジェネレーションの幅も広い。「あのおっちゃん、70歳やけど、吊り込みさせたら誰にも負けへんよね。」という人がいる。若ければいいというわけではない文化がある。一方、若くないとダメな感性もある。ここがおもしろいとこ。職人さんのところへ行って、「おっちゃん、これこういうふうにしたいんやけど、頼まれてくれへん?」と言って、ハートや愛情や人格…靴への思いが通じれば、靴の世界というのは、ロットが大きい分、1足だけの話になれば単価があってないような世界なので、やってくれたりする。呼吸が合ってくるとジェネレーションを超えてやってくれて、「できあがったら見せにこいや」という感じでやりとりが広がっていく。量産をしない限り、単価が出てこない世界なので、世代を超えてこんな感じでネットワークが広がっていく。ここが大切。
しかも、いろんな組み合わせが、靴の世界にはある。難しそうに見えるのは、靴にはいろんな知識が必要になってくる点だと思います。たとえば、靴はサイズグレーディングしないといけないし、革を見に行っても、ひっぱって、熱を加えて、仕上げをして、コテを当てて、クリームを塗って…結果的にこうなるというのが、初めての人には全くわからない。素材屋さんに行っても同じで、知識とそれを教えてくれる人と勉強が必要な世界。靴はゆっくりと長く奥深くやれるので楽しいけど、なかなかそのあたりのシステムができあがっていないので、自分のハートと思いを相手に伝えていくことができないとモノづくりができない世界になっている。逆に言えば、そういう「思い」が伝わっていって、ネットワークが広がれば、いろんな分野のエキスパートがつながって、モノづくりが広がる可能性のある世界でもある。あちこちにいろんなエキスパートがいるので、ネットワークがどんどんできていく。だから、若い人たちには、我慢しながら自分を磨いていく、自分のためには今、何が必要かを学んで、じっくり楽しんでほしいと思います。

 

『新しいネットワークの方向性』

 

高橋: ただ、業界的には破壊されていくわけなので、新しいサプライヤーが登場してこないといけない時期にきている。ファッションの中で、靴はブーツからビーチサンダルまで、本当にいろんなものを売り場が求めてくる。適材適所にならないとダメ。サンダルのうまい工場にブーツの話を持っていってもだめだし、ブーツの工場で安いサンダルを作ろうとしてもだめ。今は、靴の世界では、クリエーターの人たちが発表する場もない。これからはこういうものをネットワーク化するエキスパートが出てくると思う。いろんなブランドを集めて、エージェントとして広報する活動をして、いろいろつないでいく。靴の作り手や靴のデザイナーは、大手ブランドもアパレルブランドも欲しがっているので、いろんな人と出会い、いろんなものを見ることが大切。人と出会うことによって、モチベーションも実力もあがってくると思うので、活発にやってほしい。
これからはSPAが全てではないので、OEMミックスや外部エンジンが出てくる。組織の中でやりきるのではなく、外部と契約をしていくという話がいっぱいでてきている。きっかけさえあれば、やりたいことがやれるチャンスが靴業界には眠っている。楽しい夢のある業界になっていくと思っているので、是非とも靴を愛してやってもらいたい。

 

*靴業界はどうあるべきか?

『業界のあるべき方向』

 

高橋:
では、視点を変えて、業界はどうあるべきなのか?
これまで工場は効率をあげることによって利益を上げてきた。それが小ロット多品種となって、当然利益の上がる構造ではない。これを破壊しないといけない。現状に合う生産システムの構築と経営戦略を立てて、ハード面の特化とソフト面の分離を行っていく。
低価格では中国に勝てない。たくさん作る、安く作るのは日本ではもはや無理。プライスではなくて、いかにリードタイム、クオリティ、オリジナリティを構築するか。工場システムをどう作っていくかが課題だと思う。

 

『映画 キンキブーツ』

 

高橋: 「キンキブーツ」という映画があった。あれが今の日本の工場の状況だと思う。
お話としては、クラシックな靴工場で社長が亡くなって、息子が継がなくてはならない。でも経営がかなり悪化していて、もうつぶして処分してしまおうということになるんですね。ところが、ここに「オカマブーツ」を作ってくれっていう注文が入ってくる。28cmとか29cmのメンズサイズのヒールものを作るのはとても難しい。すごい技術がいる。それを作り上げて、ミラノのコレクションでも大成功を納めてしまうという、実話から作られた映画なんですね。これこそ、これからの日本で起こっていくことだと思います。若い人を受け入れられる業界にならないと成立しないけど、一方では職人文化や工場の腕も残っていく。そこで、小ロットでキラッといいものをプロダクトアウトできる工場にどう変わっていくか。再構築のために適材適所というのが今の日本の靴業界のテーマだと思う。

 

『世界の靴産地の状況』

 

高橋:
そこで、世界各地の靴産地のメリット、デメリットについて触れてみます。
まずイタリアはなんといっても革がいい。世界最高の素材を作ることができる。それをうまく利用して、伝統と文化を使って作り上げていく。彼らは機能よりも表現力に特化して作っている。
イタリアはスローライフの国なので相手の市場にあわせてモノをつくるのではなくて、自分たちはこうだよというのを常に作り出している。「made in Italy」はもはや世界ブランドとなっている。セレクトショップもイタリアのMICAM展に行って靴を買う。ただ、イタリアのこうしたメリットは大きいけど、デメリットもある。それは、日本のクオリティ管理は本当に厳しいけど、イタリアではたとえヒールが折れてもあまり気にしない。イタリア人は10cmのヒールをはけば足が痛くなるのは当然と思っている。日本はもともと靴を脱いでオフになる文化だけど、ヨーロッパは一日中靴を履いている文化なので、そのあたりの感覚も違っている。それに、素材のクオリティについても、自然物は一つ一つ違っていて当たり前という感覚で、追加をかけると全く違う色がきたりする。リードタイムも長いし、納期も守られなかったりする。
スペインの状況もこれに近い。スペインもファッション性はとても高い。安全性よりも、ファッション性。しかも今、スペインのブランドは迫力ある状況になっている。MICAMの後にスペインのコレクションがあるんだけど、今はこっちの方がずっと迫力がある。余談になるんですけど…こういうイタリアやスペイン、トルコ等のコレクションは、最近は東京のホテルとかで、各国が後押ししてやっているので、一度見てみるといいかも知れないですね。そんなスペインなんですけど、やっぱりイタリアと同じようにクオリティと納期の問題があるんです。
さらにアジアの状況。中国は今や世界一の靴の輸出国になっています。低賃金のコストの安さで急成長してきた。実はイタリアなどのヨーロッパもこっそりと下請けには中国を使っていたりするわけで…ただ、中国も北京オリンピックを境にして賃金も上がっている。クオリティも上がっているが、コストも上がっている。その上、政治的にも不安定な部分がある。QCや製造力についてはもはや日本は太刀打ちできない。今の中国は最高の機械や環境の中で作っているから。ただ、中国には「文化」がない。OEMで作っているため、そういったものが育っていないわけです。

 

『日本はどうあるべきか?』

 

高橋: では、日本はどうあるべきか?ヨーロッパのファッション性、中国のコスト、スピード、量産力に対し、日本はどうあるべきか? まずは、売り場が近いので細かい配慮ができるという利点がある。相手の顔を見ながら生産できる。しかも中国では輸送コストがかかるので100足以下、50足以下の小ロットはコストパフォーマンスが悪くてできないけど、日本でなら小ロット生産が可能。また、リードタイムや納期も1週間、2週間でできる方法もあると思う。さらに修理への対応も可能。イタリアも中国もコストと時間的に修理は出しづらいので、これは日本の強みになると思う。今は修理をやりながらものづくりをしているクリエーターも増えています。修理への圧倒的なニーズがあって、これは大切なポイントだと思います。
世界の中で日本を位置づけて、日本の靴はどうあるべきか? いろいろとやっていくと方法論や可能性が必ず見えてきます。日本は労働コストは高い。だから安いものは作れない。品質やクオリティ、リードタイムや相手の背中に手が届くサービス…こういう利点をミックスさせていけば、小さなものでも成功する道が開けていくし、ここから大きくなっていく可能性があると思います。これからは業界的には、超大型の企業と個人の小さいものという両極端になっていくと思うんですけど、とにかく今、靴はおもしろい。靴はとっても可能性があるので本当におもしろい…そういうことを若い皆さんに伝えたくて、今日は名古屋へやってきたわけです。このあたりのことを少しでもお伝えできたらうれしく思います。

 

*2007シューズトレンド

 

高橋: それでは、ここからは先日9月21日から24日にミラノで開催されたMICAM展に行ってきましたので、来シーズンの靴について映像を見ながら少しご報告したいと思います。MICAM展というのは世界最高規模のシューズコレクションです。デザイナーズブランド関係の人たちもこれを見て、マーケッティング、ブランディングを修正して、自分たちのコレクションに出しているって感じです。

<MICAM展から見た2007シューズトレンド>
ポイント1 ヴィヴィットカラー
やはり今回のポイントの第一はヴィヴィットカラーが多かったことです。強い色、光ったもの、エナメルが特徴的です。赤とブルー系、特に裏中での使い方やアッパーと裏のミックスといったいろんな組み合わせが見られました。来年の春夏から秋冬には赤のきれいなもの、青のグラデーション、ネイビー系が久しぶりに出てきています。その分茶系が減っている感じ。
フォルム的にも前回までのナチュラル系や汚しのようなものが減って、ずいぶんきれいめになって、作りもシャープで華奢になってきています。

ポイント2 素材 1.エナメル・フィルム
glossyで透明感のある素材が好まれています。型もプレーン系が出てきていて、オープントゥやシンプルなパンプスも久しぶりに出ています。つや感のあるものが本当に多くて、サンダル系にもかかとがついてきて、今回は極端にシンプルな傾向の中で、クリスタルな色使いが目立っています。イタリアのエナメルは本当に透明感があって、日本ではこういうエナメルは作れないんですね。

ポイント3 素材 2.サテン・帆布・雑材
特に帆布がたくさん使われていました。サマーブーツが多くて、帆布と革の組み合わせや、帆布にプリントをかけたり、刺繍をしたりという感じです。靴業界はサマーブーツを怖がっていたんですけど、今年少し売れたので、来年はもう少し強めの発注でいくと思います。あと、レーシーなものも続いているし、サテンを汚してといったものも注目でした。

ポイント4 装飾 1.デコラティブな装飾
手の込んだパーツを作っているメーカーが増えています。ラグジュアリーブランドのパーツは本当に手がかかっていて、その分とんでもなく高い値段がついてるんです。

ポイント5 装飾 2.異素材ミックスの飾り
ビーズ、スパンコール、コサージュ…革と布と、いろいろなものを集めて装飾を作り上げています。今まで使われてこなかったような柔らかな材料もミックスさせているものがたくさん出てきています。

ポイント6 ラスト(木型)
木型の傾向で一番はっきりしているのはスクエアトゥの台頭です。バレーのトンと落ちたようなスクエアーとか、いろんなスクエアーが取り上げられていました。

ポイント7 デザイン靴種 1.シンプル化現象
エレガンス傾向がとても顕著です。プレーンのオープントゥとかがすごく売れている。ヒールも太めでシンプルな丸カットやVカットが復活してきています。この秋冬はブーツが引っ張ってきた市場でパンプスが売れています。市場では丸が最高のボリュームとなっていて、その中でスクエアートゥをどう見せていくがポイントになっています。

ポイント8 デザイン靴種 2.バレエシューズ
バレエシューズタイプは特に目立った傾向です。2〜3年前に大きなブームがあったんですけど、今回はさまざまなバリエーションで、2〜3月頃に市場にセッティングされると思います。スパンコールなどの光物も含めて、ポケットシューズの流れとバレエシューズが連動して動いていく感じ。ポケットのクチュっとしたものが出てきています。

ポイント9 デザイン靴種 3.サンダル
踵をどうクリエーションするか。今回は足首の位置がとても高いんです。ベルトが高くなっていて後ろのあしらいをデコラティブにしています。バックバンドやミュールが減って、踵を決めたオープントゥが増えています。こういう靴はジャストフィットさせるのがとても難しいんですね。そういう意味では、まさに靴職人の腕の見せ所。エレガンス感、きちっとした綺麗めの方向に流れていっています。これまでのヌーディーで開放的な靴から、踵をおさえて緊張感のある靴に移ってきているという感じです。

ポイント10 デザイン靴種 4.アンクルブーツ・ショートブーツ
ロングブーツに代わってショートブーツが来年の傾向になります。丸めの寸詰まりで、ヒールは太め、サイドのある新しいディテールのショートやジョッパーズ系のもの、クラシカルなものなど、少し大きなムーブメントになりそうです。ショートブーツが動くと、ミセスのゾーンが動くんです。ロングブーツはミセスには履きづらかったり、面倒くさかったりで人気がないんだけど、ショートブーツなら大丈夫。ということでヤング系とラグジュアリー系がミックスされて動いていくことになります。特に厚底のモード系のミセスゾーンが注目になります。ここ数年、ミセスゾーンが急速に落ち込んでいたので、新しくクリエイトされていくと思います。
こうした面でも、この2〜3年は、若い人たちにとって腕の見せ所にもなるし、靴に入りやすいロケーションになると思います。是非ともネットワークを広げて、みなさんには頑張っていってほしいと思っています。ありがとうございました。

 

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