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【会員紹介】創業期から引き継がれる独自の経営哲学 ―クロスプラス株式会社―

はじまり...世の中のニーズに応えて森社長2.JPG

戦後間もない1950年頃、創業者辻村重治氏(故人名誉会長)の夫人(故人)は、名古屋駅周辺で洋裁学校を開いていた。当時、その洋裁学校へ、辻村氏の実弟が創業したイトキンから、ブラウスの縫製の依頼があり、飛ぶように売れていった。

辻村氏は「自分たちも、ブラウスを作って売れば良いのではないか」と、1951年に婦人ブラウスの製造を目的とした櫻屋商店を創業した。

しかし、創業から約10年を迎え、業容の拡大につれて在庫が拡大していたところへ、経済復興のスローダウンが襲った。売れ行きの落ちた商品在庫や委託販売による返品が、収益・資金繰りを圧迫し、経営の危機に陥った。なんとか、危機を脱した時に、今に引き継がれる経営の重要哲学が生まれる事となった。

そして、同社を飛躍させる最大の顧客となった黎明期の量販店(スーパーマーケット)の多店舗化が始まったのである。

創業期の危機から引き継がれていること

経営危機から生まれた重要哲学は、
「ファッションは鮮度が命。」
「アパレルは在庫に始まり、在庫に終わる。」
「作った者が、責任を持って売る。」
「銀行は、雨の日に傘を貸してくれない。無借金経営を目指す。」

「アパレルは在庫に始まり、在庫に終わる。」...『在庫哲学』
同社の営業部門は、売上、利益、在庫回転を追求され、とりわけ在庫回転は厳しく追求される。現在の在庫回転数は年間約30回転。およそ10日間で、在庫商品が全て入れ替わる計算である。
在庫商品は、季節が終われば即、商品原価を評価ダウン。営業は在庫の鮮度を保たなければ、せっかく稼いだ利益が評価ダウンで飛んでしまう。だからこそ鮮度が落ちる前に売り切る。

「ファッションは鮮度が命。」、「作った者が、責任を持って売る。」
同社は、営業部門に約40年前から事業部制(ディビジョン制)を導入。各ディビジョンは、商品をどのように企画し、生産し、販売するかの権限を与えられている。そのかわり、責任を持って売り切り商品の鮮度を保ち、在庫回転を守る。
このディビジョン制が、顧客の声を素早く商品に反映し、常に新鮮なファッションを提供する原動力となっている。

「銀行は、雨の日に傘を貸してくれない。無借金経営を目指す。」
量販店の商売は、「買い取り」が基本、支払サイトは短く(当時)、現金が主体であった。無借金を目指すには、絶好の取引条件、店舗が増えていけば商売も拡大する。
主販路を量販店へ向ける転換と『在庫哲学』の徹底で、約20年で無借金経営を実現。何よりも、店舗が増えるのは、当時の消費生活が大きく変わる時代を反映していた。

ecomarche.jpg次の成長と総合アパレルを目指して小売(SPA)へ参入

バブル経済の破綻は、流通業界にも大きな変動をもたらした。
相次いで得意先の量販店が破綻する一方、残っている量販店は、カテゴリーキラーの専門店の台頭で激しい価格競争を行い市場の縮小が始まった。

次への成長を求めて、既存の製造卸売事業を磐石にしつつ小売への参入を決定。製造卸の商品企画、生産力を使ってのシナジー効果が出せるものと思っていたが、卸売業と小売業ではノウハウが違うため、充分なシナジー効果を出せない年数が過ぎてしまった。
ノウハウの違いを例えるなら、卸売は狩猟に似ており、小売は農業に似ている。狩猟は時として大物が獲れることもあるが、同じワナの繰り返しでは、獲物に逃げられてしまう。一方、農業は、同じ土地で土を肥やし、種を蒔き水の世話や草取りといった日々の作業と研究努力をしなければ収穫が出来ない。
違いを理解したからこそ、打てる手立ても判るようになった。

磐石にする既存の製造卸売事業にも消費者の変化が現れてきている。委託商売が基本の百貨店からPB(プライベートブランド)立ち上げの依頼があり、買取りの商売が始まっている。そごう・西武百貨店の「リミテッド・エディションbyアツロウ タヤマ」での、高付加価値商品のロープライス化、トータルコーディネイト商品+店舗マーチャンダイジングの成果に注目した量販店の大手各社からも大きなPBのオファーが入ってきている。

また近年、インターネットやTVショッピング等の新しいマスメディアを駆使した商品販売方法の拡大により、通信販売も定番的な商品からファッション商品の構成を拡大している。この新しい無店舗販売への対応も、卸売事業を拡大するチャンスとして挑戦が行われている。


社名に込められた想い

現在の「クロスプラス」という名前は、2001年の創業50周年目を機に、新たな飛躍を目指して社名変更したもの。
クロスは「CLOTH(衣服)・交わる・かけあわせる・掛算・困難を超える」、プラスは「加える・足し算・プラス志向」の意味。「社員一人ひとりの個性や能力が掛算となって力を発揮し、消費者にプラスアルファの価値を提供する企業としての姿勢を今後も表現していきたい」という森社長の熱い想いが込められている。


【クロスプラス株式会社ホームページ】
http://www.crossplus.co.jp/

ショールーム写真.JPG写真(上) クロスプラス株式会社 
       代表取締役社長 森文夫氏

写真(中) ecomarche: オーガニックコットンやバンブー、ミルクなど、自然由来のエコ素材を使用したウェアを中心に、ファッション小物、生活雑貨なども展開する、ナチュラルカジュアルブランド。

写真(下) DECOY:『ブリティッシュトラッド』にトレンドを取り入れた、着心地の良い上質なウェアと小物雑貨を展開する、ライフスタイル提案ブランド。