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【会員紹介】「お客様視点」-創業400年の老舗が意気込む原点回帰-"松坂屋名古屋店"

熊木敏店長
松坂屋名古屋店
熊木敏店長

今年創業400周年を迎え、数々の記念催事で盛り上がりを見せる松坂屋名古屋店。これまで「松坂屋」の歴史を支えてきたものと今後について、株式会社大丸松坂屋百貨店 執行役員 松坂屋名古屋店長の熊木 敏様にお話を伺った。

「お客様視点」の歴史と「松坂屋ことはじめ」
今年1月に行われた「松坂屋創業 400周年記念 大感謝祭」を皮切りに、従来のやり方にはとらわれず、新しい発想で企画される記念催事。例えば老舗料亭でのイベントでは、名庭へ世界に1台の限定フェラーリを配し、参加したお客様の度肝を抜いた。また、松坂屋美術館の「川合玉堂展」では、これまでにない作品数の紹介を可能にするなど、どの企画にも私たちを唸らせる魅力が溢れる。

その松坂屋で創業当初より大切にされているのは、今も昔も「お客様視点」。常にお客様の声が積極的に取り入れられ、店づくりに反映されてきた。それは「福袋」や「名店街」など、今では当たり前のように親しまれている百貨店名物の数々が、その発祥の地として「松坂屋ことはじめ」に語られていることからも分かる。それほどの昔より、松坂屋では「お客様視点」からの「革新」が身上とされてきた。

大正9年に制定された「信条」
大正9年に制定された「信条」

この松坂屋のDNAともいうべき「お客様視点」。元となったのは元文元(1736)年、呉服太物小売へ転業した折に定めた「元文の掟書」である。その一条には「御大身御小身に限らず御大切に御挨拶申上くべくは勿論、御買物多少の隔てなく粗末に仕るまじく候」(どのようなお客様にも心からご挨拶申し上げる事はもちろん、お買物の多少にかかわらず、ないがしろにすることのないように)と記されている。百貨店に業態転換した後、大正9(1920)年に制定した「信条」では、「万事顧客本位たるべし」「顧客の心を以て心と為し」との条文が掲げられた。

そして平成22年大丸との統合を遂げた現在も、基本理念の中に「お客様視点」の精神は生き続けている。名古屋店では、この記念すべき節目の年に「全員が販売員」の自覚を持ち、「お客様視点」への原点回帰が全店で取り組まれている。その心意気の象徴が、記念催事の際、入口に掲げられる立派な大暖簾だ。

ひときわ目を引く大暖簾
ひときわ目を引く大暖簾

 

DNAを引き継ぐために「お客様を知る」

松坂屋に息づく「お客様視点」のDNAを引き継ぐために、現在の名古屋店を率いる熊木 敏店長。「本当の意味での「お客様視点」の店づくりや変化対応は、この20年ほどの間、やりきれていなかったのではないか。」と振り返る。大切なのは、時代の流れの速さや、溢れる情報の中にあっても、"私たちのお客様"を見つめ、知ること。それが、お客様に喜ばれる店づくりにつながっていく。

この上期「マネジャークリニック」と題し、名古屋店で各売場を仕切るマネジャー全員と2回ずつの面談を行った。松坂屋に来られるお客様は、他にどこで買物をされているか? 外商のお客様は昔馴染みの方が多い。では次の世代のお客様の属性は把握されているか? これまでの経験から、地域のお客様を知るための気付きを促し、現場の声をすくい上げ、新しい取り組みのスピードアップも図る。根気よく、いつも社員に問うのは「私たちのお客様はどこにいるか?」日々、「お客様視点」のDNAを刺激する。

「必要最低限のコストで顧客満足最大化」にも取り組む。お客様へのコストを削ったり、惜しんだりしないために、他のコストを見直し、大丸との統合のメリットを最大限に生かす。

もう一つ「生活と文化を結ぶ」役割を担ってきた自負も忘れない。松坂屋美術館はその代表例のひとつだ。全国の百貨店併設の美術館が次々クローズする中、どの催しにも変わらぬこだわりをもって運営してきた。文化の発信ができる百貨店という点では、特に名古屋地区の他の店舗とは違ったモデルだ。

にぎわう大北海道物産展
にぎわう大北海道物産展

一方、文化の造詣に深く、美術品を購入するお客様は、バーゲン品も買う。この一見相反するお客様の価値観に応えるのが松坂屋であり、品ぞろえや売り場づくりなど様々なバランスの取り方の重要性を感じている。そのためにはやはり「お客様を知る」ことにつきる。その上で、これまでの規範をどんどん転換し、柔軟に変えていく。しかし、お客様に喜んでいただくための一つ一つの手段は愚直でベタな方法から生まれることも忘れない。

 

暖簾に託された「信用」を守るために

何よりの宝は、これまで松坂屋を守り抜いてきた先人から受け継いだ、暖簾に息づく「信用」。それに応えるべく、今秋以降も創業400周年の一年を締めくくる記念催事が目白押しだ。

そして来年には、大規模な店内の改装が控えている。店長曰く「お客様視点で売場をガラッと変える」。久々に本館1階や地下食品売り場も大幅な改装が行われる予定だ。車での来店数割合が世界一という、名古屋店の特性にも更に応えたい。「改装と同時に違う革新も行っていきたい。働く人も変わらなくては。」と意気込む。

「お客様視点」から生まれる「伝統と革新」。今後の松坂屋名古屋店からますます目が離せなくなった。もしかすると「松坂屋ことはじめ」にまた新しい歴史が刻まれるかもしれない。

【松坂屋名古屋店ホームページ】
http://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/