平成19年度活動報告

平成19年度下期インターンシップ事業報告

ファッション業界の優秀な人材を育てるため、愛知県服装学校協会及びナゴヤファッション協会会員企業のご協力の下、昨年9月にスタートした、「平成19年度下期インターンシップ研修」は、3月度に集中したものの9社の企業と5つの学校、30名の学生にご参加をいただき、3月末にて終了いたしました。ご協力いただきました企業、学校の皆様方に心よりお礼申し上げます。

<下期受入れ協力企業・9社(26研修プログラム)>
株式会社エフリード/クロスプラス株式会社/三永株式会社/株式会社鈴丹/瀧定名古屋株式会社/タキヒヨー株式会社/万兵株式会社/株式会社名鉄百貨店/モリリン株式会社

<下期参加学校・5校30名>
愛知文化服装専門学校6名/明美文化服装専門学校3名/中部ファッション専門学校5名/名古屋ファッション専門学校11名/名古屋服飾専門学校5名

インターンシップ報告会/万兵(株)

【開催データ】
開催日時:平成20年3月28日(金)9:00〜10:30
会場:万兵(株)第2ビル8F (株)万兵ファッションクリエイト会議室
参加者: (株)万兵ファッションクリエイト 執行役員デザイン室室長 坪井憲生さん・ 研修生7名(愛知文化服装専門学校 岩本真由子さん、中部ファッション専門学校 青野沙貴恵さん・今枝千乃さん、名古屋ファッション専門学校 宮下陽子さん・近藤綾乃さん、名古屋服飾専門学校 舘百合子さん・坪井小春さん)

将来のパタンナーの希望がさらに膨らんだ2週間

 今回の万兵(株)での研修は、3月17日から約2週間かけて行われ、パタンナーを目指す7名の女子学生が参加しました。
 最終日の28日には、坪井さんの進行で報告会が行われ、研修に参加した学生たちが次々と各職場での研修の内容や感想などを報告し合いました。学生からは、「展示会前ということもあり、実践的なことに携われて面白かった」、「CADが苦手で苦労した」、「プロとして仕事には厳しいものの、会社の雰囲気は楽しい雰囲気で安心した」などの感想が寄せられました。
 一方、坪井さんからは、「CADは進化しているが、パタンナーは、CADに頼らず、自分の手でパターンを引くことが基本であり重要」、「展示会直前で、忙しい中での研修だった。職場に顔を出したら、忙しい中教えてもらった人にお礼の声を」といった具体的なアドバイスから、「インターンシップは、こういうことができないと企業でやっていけないということが分かる。それを学生時代に克服していって欲しい。また、それが他の人との差別化にもつながる」、「もっともっと自分の感性をしっかり磨いていって欲しい」、「パタンナーの仕事は、緊張感の高い仕事。ミスがあれば、相手からのクレームにつながり、顔では笑っていても高い緊張感の元で働いている。大変な仕事だが、女性として長く勤められるというメリットはある」といったパタンナーとしての心構えまで、1人1人に対して丁寧なコメントがありました。
 学生たちからは、「社員の皆さんが、本当に親切に手取り足取り教えていただいて感謝しています」、「将来のパタンナーへの希望がさらに膨らんだ。」という声が多く聞かれ、今後の目標や課題を確認し、成果を実感することができた今回の万兵(株)での研修となりました。

ご協力ありがとうございました

5月から研修がスタートした平成19年度インターンシップ事業は、上期・下期を合わせ、参加企業14社のご協力のもと、7校67名の学生に参加をいただきすべて終了いたしました。ご協力ありがとうございました。



Vol.12 クリエーター交流会
「靴を通して見たいもの!!!」


【開催データ】
開催日時:2008年3月28日(金)
     18:00〜19:30 セミナー
     19:30〜20:30 カジュアルパーティー
会場:靴デザイン・クラフトスクール
   名古屋市西区栄生一丁目3番10号
講師:「Ital Style」NAGOYA店長 白水良弘さん
参加者:53名

 今回の交流会は、昨年10月に移転・リニューアルした「靴デザイン・クラフトスクール」の工房を会場に、講師には、セレクトショップ「Ital Style」で靴のバイイングやオリジナルシューズのデザインを27年間手がけておられる白水良弘さんをお迎えし、「靴を通してみたいもの!!!」をテーマに、靴作りに対する思いやこれからのモノづくりに必要なことなどについてお話いただきました。

「靴」への思い入れ
 「最初は、自分の手で靴づくりがしたくて、職人の人に就いて靴づくりの修行をした」というほど靴に対する思い入れが深い白水さん。バイヤーに転向されたのは、「残念ながら売れる靴を作ることの難しさを感じたため」とおっしゃいます。そのため、靴づくりをする側のご経験も踏まえ、靴づくりに携わる参加者の方たちへ、「作るだけではなく、ディレクションや売り込み方を身に着けることが重要」と、まず靴づくりについてアドバイスをされました。 そして、バイイングの心得については、自らのバイヤー生活を振り返り、「最初は、自分の好きなものだけ買い付けていたため、売れるものと売れないものがあった」、「初めて買っていただくベーシックな靴、何回か買っていただいた人がまた欲しくなるヘンな靴などいろいろな靴が必要」と語られました。

活発な議論で盛り上がった会場
 「靴を作るときにどういうイメージを持っているか」、「ファッションと聞いて何をイメージするか」など、白水さんは、時折会場の参加者に質問を投げかけながら、緊張感のあるテンポの良い進行で交流会を進めていかれました。会場の参加者も、「靴を作るときにイメージするのは、見て美しいということと、履いてもらってうれしいということ」、「ファッションとは、ふわふわしたものだが、その人のライフスタイル全体が現れる」などと白水さんの質問に答え、講師と参加者との間で「靴づくり」に携わる共通の目線からの活発で有意義な議論が交わされていきました。

「靴が変わると…」
 「売り手は『夢』を売る」と語り、「すごいものを作ってもらって、さらにそれを売れるようにするのが売り手の仕事」とバイヤーとしての姿勢を語る白水さん。「靴が変わると雰囲気ががらりと変わる。背筋が伸びるような背広と一歩前に出る靴で、仕事に対する姿勢も変わる」、講師の白水さんはこのように靴に対するバイヤーとしての熱い思いがこもった言葉で講演を締めくくられました。



Vol.11 クリエーター交流会
「クリエイターズ ライブ! ROUND3」


【開催データ】
開催日時:2008年3月25日(火)
     18:00〜19:30 トークライブ
     19:30〜20:30 フレンドシップパーティ
会場:7th Cafe(セブンス カフェ)
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル7F
ゲスト:西脇智代さん(ninitaファッションデザイナー)
スペシャルゲスト:OMOCHIさん(クリエイター)
トークライブナビゲーター:小川孝智さん(nara store バイヤー)
参加者数:43名

 今回のゲストは、「大人のかわいいカジュアル」をコンセプトに、素材にこだわり、ファッションに敏感な遊び心ある大人の女性に向けた服作りをしている「ninita(ニニータ)」のデザイナー西脇智代さん。西脇さんはフリースタイリストとしても第一線で活躍されており、宮崎あおいさんや長澤まさみさんなど数多くの女優、タレントのスタイリングを手がけています。

小学校の卒業文集でも「デザイナーになりたい」と
 小学校1・2年の頃から洋服を選ぶことに関しては我が強く、母親が選ぶものと意見が食い違うことが多かったと語る西脇さん。小学校の卒業文集でも既に「デザイナーになりたい」と書いていたくらい、小さい頃からデザイナーへの思いがあったと語ります。将来の進路を考え選んだ文化服装学院で学んだのは、スタイリストの専門課程ではなく、「服装科」と「デザイン服装科」でしたが、3年間朝から晩まで服作りをし、そこで知り合った仲間が今のスタイリストの仕事をする上での財産にもなったとおっしゃいます。

スタイリストになったのは?
 西脇さんのお話によると、スタイリストになったのは、学生時代スタイリストのアシスタントをしたことがきっかけだったということです。また、「一人でやるデザイナーよりも、音楽や演出を行う人など沢山の人と皆で一緒にひとつのものを作り上げることの面白さにあこがれた」とのこと。しばらくは会社に所属してスタイリストの仕事に携わった後、クライアントの勧めもあり、会社から独立してフリーになりましたが、独立後は、西脇さんいわく、「運が強く、仕事をしたいと思う相手の仕事が自然と入ってきた」と言います。

ninitaというブランドを立ち上げた理由
 突然、資産家でカシミヤ工場を持つインドの方の依頼で、マフラーをデザインしたことがきっかけで、最初はカシミヤオンリーで始めたとのこと。途中、経営者の交代などいろいろあったが、展示会をでの注文も順調につき、軌道に乗ったということです。

 会社社長、スタイリスト、デザイナーという、3つの夢を、持ち前のバイタリティーと豊かな才能でこなす西脇さん。「休めない」「眠れない」というほどの激務を、一見さらりとこなす、西脇さんの自然体で優しい人柄と、「着る人にHAPPYな気持ちになってもらいたい」というninita(ニニータ)のあたたかみのある雰囲気が、会場いっぱいに溢れる今回の交流会となりました。



「2008〜2009秋冬ヨーロッパコレクショントレンド速報」セミナー

【開催データ】
開催日時:2008年3月27日(木)13:00〜16:30
会場:デザインホール
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル3F
講師:藤岡篤子 氏(ファッション・ジャーナリスト)
受講者数:334名

フォルムを重要視したボリューム感とテクスチャーが特徴。
ワントーンカラーやセットアップにフォークロア・ゴシックのエッセンスを効かせるのがトレンド。

 日本のアパレルマーケットに大きな影響を与えるヨーロッパコレクション。的確な分析と最新のデザイナー情報が評判の藤岡篤子氏のセミナーとあって、今回も会場は満員となりました。
 冒頭で「前シーズンはミラノ・パリともアート一辺倒だったが、この秋はリアル・クローズが戻ってきた」「ミラノは正統派英国調、パリは50年代オートクチュールからアイデアをとったコンサバティブなファッションが基本。これをどうカッコ良く着られるかをデザイナーが探っている」と大勢を分析。そのうえで、「この秋はデザイン性よりも素材・ディテールが大切。テクスチャーの凹凸感やフォルムを重要視している」と大きな流れを述べられました。

  今年の特徴は「フォルムの重要視」。背中や腰・胸など、どこでボリュームを表現するかがポイントだそうです。さらに「テクスチャーの持つ力が全体を新しく見せている」「シルエットを際立たせるためのトータルカラー配色も重要。全体が洗練され抑制された雰囲気のワントーンカラーコーディネートが多い」「スパンコールやスーパーコラージュなどこんもりした立体感も特徴的」と分析されました。
 細かなトレンド別傾向の分析はカラーからスタート。ショーのインビテーションカードの紹介にはじまり、それぞれのコレクションの作品を見ながら詳細な説明がなされました。今年は英国調の深いグリーンやグリーンのタータン、ロイヤルスチュアートが目立つそう。マダムエレガンスなワントーンカラーコーディネートやパウダリーなパステルカラー、また華やかで女らしいパープル・ボルドーなどもワントーンでまとめられていると述べられました。

 続いて、建築や彫刻のようなフォルムの「スカルプチャー」や、シックできちんとした「セットアップ」がニュートレンドだと紹介。さまざまな作品の映像を見ながら、具体的にどの部分が新しいのかがわかりやすく説明されました。素材・柄は「一見地味に見えるが、よく見ると手が込んでいてゴージャスな素材が多い」と講評。正統派ツイードや一重仕立ての大きなフォルムの素材、大胆で装飾的な凹凸感のあるテクスチャー効果、羽根使いなどの特徴についても説明がありました。スタイリング・キーアイテム・デザインディテール、グッズなどについても同様に詳細な分析と説明が続き、前半は終了しました。

 休憩をはさんで後半は、各ブランドのデザイナー交代などの現地情報とコレクション人気ランキングの紹介ではじまりました。デザイナーズコレクションの紹介は、まずミラノから−。スライドで実際の作品を見ながら、雪景色でスタートした「BLUGIRL」、さすらいへの憧れをテーマにした「GIORGIO ARMANI」はじめ、30のコレクションが紹介されました。
 パリ・コレクションは、クラシカルフューチャーで洋服が構造物のような「BALENCIAGA」、すべて英国にルーツがあるもので構成された「STELLA McCARTNEY」、香水ボトルのイメージから抜け出し秋の木の葉の色が美しい「NINA RICCI」など、33コレクションが分析・紹介されました。

 会場ではアパレルや専門店、百貨店など各企業のデザイナー・商品企画などを担当する参加者が熱心にメモをとり、セミナーからヨーロッパコレクションの傾向を来シーズンに生かそうという熱意が満々。3時間半では聞き足りないといった熱気を残しながらの閉会となりました。



2008年秋冬NYコレクション速報と米国ファッションビジネス
ニューリッチ顧客層をふまえたマーケティングとアパレル


【開催データ】
開催日時:2008年3月14日(金)13:30〜15:30
会場:アイリス愛知 2F コスモス
名古屋市中区丸の内2-5-10
講師:宇自可 伶 氏(ニューヨーク在住・ファッションプロデューサー)
受講者数:118名

 ニューヨークコレクションの話題を中心にアメリカのホットなファッションビジネス情報を知ることのできる宇自可伶氏の人気セミナー。今回はニューリッチ顧客層にターゲットをあてた新しいマーケティングと、売れるアパレルについての話題です。
 「昔は、NYコレクションはミラノやパリの真似だといわれたが、いまや逆にミラノ・パリに影響を与えている」「NYで生き残るには厳しい勝負が待っている。売れないものをアートとしてやっているわけにはいかない」と、アメリカならではのシビアなファッションビジネス事情を展開されました。

 アメリカでは今、服だけでなくインテリアや食べ物などライフスタイル全体を楽しむ「ニューリッチ」と呼ばれる人たちが消費をリードしています。ファッションも単純にON/OFFだけではなく、ライフスタイルによって着分ける時代なのだとか。人気ドラマを例にアメリカの文化・経済・流行に切り込みながらTory BurchやCurveといった今いちばん売れている新しいブランドを紹介。NYファッション界の最前線で活躍する宇自可氏ならではのお話に、参加者は皆、熱心に耳を傾けていました。

 続いて話題は、アメリカの百貨店売筋情報から春夏プルミエール・ビジョン、2008秋のNYコレクションへ――。「くる」か「こないか」の読みはバイヤーとジャーナリストで異なるそうですが、「NYでは実際のビジネスで売れていないと、ショーにも人気がない」「服が売れないデザイナーは、ジャーナリスト受けはしてもバイヤーに人気がない」と宇自可氏は分析されます。
 今年の秋冬は、若い女性をターゲットとしたニューお嬢様ルックが今年の売れ筋トレンドで、ボヘミアンロック調やポイントで入れるイルミネーションカラー使いもキーだそうです。その他にも、「ちょっと気品があってきちんとしていて新しい感じ」の「ニューコンサバルック」、お嬢様・マダムスタイルに欠かせない「ニューリッチルック」、ラムのコートやベストをはおった「ボヘミアンロック」、パフスリーブや7分丈などディテールが新しい「ジャケット」など、新鮮で日本でも人気のでそうなファッションが数多く紹介されました。
 「NYではメンズも人気」で、「レディスの上でもメンズは大切」だとのことで、たくさんのコレクションから宇自可氏が注目するメンズファッションも紹介されました。

 最後に宇自可氏は、いま最も注目する39人のデザイナーの作品を紹介。全体の締めくくりに、「今年のNY秋冬はいい!」と断言されました。軽いテイストでそのまま日本市場にもってきてもよい雰囲気だとのことです。
 「NYコレクションは、世界経済・お祭り・売れているものなど、すべてが入ったコレクション。全部がファッションに影響している」と述べられました。講演終了後には、熱心な参加者たちが個別に質問をする姿も見受けられました。



Vol.10 クリエーター交流会
「クリエイターズ ライブ! 2007 ROUND2」


【開催データ】
開催日時:2007年12月4日(火)
     18:00〜19:30 トークライブ
     19:30〜20:30 フレンドシップパーティ
会場:7th Cafe(セブンス カフェ)
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル7F
ゲスト:森永邦彦さん ANREALAGE(アンリアレイジ)designer
スペシャルゲスト:杉原一平さん ピアニスト
トークライブナビゲーター:小川孝智さん(nara store バイヤー)
参加者数:94名

 今回は、東京コレクションで活躍中の新進デザイナーをシリーズでご紹介する「クリエーターズライブ! 2007」の第2弾。「神は細部に宿る」をコンセプトに独自の世界を追求し、東京コレクションの中でもひときわ異彩を放つ、ANREALAGE(アンリアレイジ)のdesigner森永邦彦さんがゲスト。最新の'08S/Sコレクションの話を始め、ファッションデザインへの思い、クリエイションの原点などをライブで伺いました。

神田恵介さんが森永さんの原点
 森永さんは、早稲田大学の社会科学部卒業で、大学在学中にバンタンキャリアスクールに通われるという少しデザイナーとしては変わったキャリアの持ち主ですが、神田恵介さんが先輩としていらっしゃった早稲田大学の「繊維研究会」に所属し、そのサークル活動の中で初めて洋服を作られたとのこと。当時、18歳の森永さんにとって、東京の私鉄でゲリラショーを行うなどしていた「神田恵介さんの『熱量』が僕に響いた」と熱っぽく語ります。その後、学生時代に森永さんは2年間で計10回のコレクションを行いました。

サプライズゲスト杉原一平さんとのなれそめについて
 途中から、もう一人のゲスト杉原一平さんが加わり、'07SSの「祈り」のコレクションのDVD上映と杉原さんの「祈り」の生演奏とともに、会場はますます盛り上がります。はじめは森永さんから、杉原さんにコンタクトを取られ、杉原さんはアンリアレイジの最初のコレクションから現在に至るまでの全コレクションに関わることになります。「祈り」という曲にまつわるエピソードとして、「祈り」というテーマを森永さんから杉原さんに知らせたその日に、テーマをまだ知らない杉原さんからこの音楽が届いたといいます。「教会音楽のような崇高さを持つこのメロディー、まさに『祈り』の雰囲気だよね」ということになったとのこと。二人は、「創作に向かう気持ちやお互いが考えている事がとても共通している」と言います。

新作「ノーモア」について
 新作「ノーモア」では、意識的にイメージを変えたいという思いの中で、「足し算をして過剰なものをつくるという従来のイメージとは違うもの、簡単に言うならば『引き算』をやりたかった」と話されます。たとえば、一度ボタンで全面を埋め尽くした服をつくり、完成後あえてその釦を切り外す。釦をつけた糸の痕跡のみをネップのようにみせようと試みました。足して、引いて、なるべく遠回りをしたゼロを表現したいと。
 また、ピアノ演奏と同時に使われている「時報」は、当日のショーの時間の生時報。リアリティの象徴として、またショーを訪れた人全員が、同じ場所で、同じ洋服をみて、同じ時間を過ごした、そんな偶然のあかしを意識に刻むため用いられたとのことです。

 食い入るようにコレクションの映像を見つめる若きクリエーターたちの熱いまなざしと、「10代に比べて、よくも悪くも自分が反応するもの、感情の起伏、が少なくなってきている。いろいろなものや出来事に、もっともっと心がうごく人間でありたい。もっともっと小さな事で泣いたり笑ったりしていたい。感じることが大事。」と語る森永さんの熱い語り口が印象的な今回の交流会でした。



「旧暦に学ぶ2008年お天気予測」セミナー

【開催データ】
開催日時:2007年11月28日(水) 13:30〜15:00
会場:栄ガスビル 4F会議室
   名古屋市中区栄3-15-33
講師:小林弦彦 氏 旧暦お天気博士(元倉敷紡績株式会社常務取締役)
受講者数:77名

旧暦とのズレが繊維業界に与える影響は大。お天気を予測して商売繁盛!

 昨年、好評を博した旧暦お天気博士小林弦彦氏のセミナーが今年も開催されました。20年来の旧暦研究のデータに基づいて、来年の天候と繊維ビジネスの動向を予測。繊維関係者が大半を占める出席者に「旧暦を活用してビジネスの成功を」と呼びかけられました。

 今回は小林氏監修による「旧暦カレンダー」が配布され、参加者はみな興味津々。「今回が初めて」という出席者も多いため、まずはカレンダーと資料を用いて「旧暦とはなにか」から説明されました。「新暦は、明治5年12月3日に、28日間飛ばして明治6年元旦にしたもの。旧暦でいえば12月10日からが、やっと霜月(11月)。新暦の正月は、旧暦では11月23日。新春、迎春ということばがいかに間違っているかわかりますね」と身近な話題を展開されました。
 「日本の気候は新暦ではなかなか予測できない」と小林氏。旧暦を活用すれば正しい季節の動きが把握でき、生産調整ができると述べられました。古典文学や暮らしの中の年中行事においても季節感のズレを感じますが、「旧暦との誤差の影響をいちばん大きく受けるのが繊維業界」とのこと。「繊維業界は中国との商売も多く、旧正月がいつかを把握していないと納期管理ができない」と国際的な視点からもアドバイスをされました。

  「春夏秋冬、どこに閏月が入るかによって日本の気候は大きく変わる」とのことで、「昨年同時期比だけでは流れを見誤る」と指摘。シーズンを9つに分けたタイムテーブルを提案している小林氏が、気になる来シーズンのお天気を分析されました。

 2008年は、おおむね「四季順循。季節のぶれがすくない」と予測。「閏の影響をまったく受けない年。今年に比べてシーズンの到来が11日早い。繊維業界にとっては大きい」と述べられました。来年末は本当に寒くなり、繊維業界にとって冬物がシーズン内に売れる年になるとのこと。しかし、「再来年は閏5月がくるので、くれぐれも昨年同期でモノをつくらないように」と注意を喚起されました。

  「2008年は、私のキャッチフレーズどおり『旧暦でつくり、新暦で売れ』という年。本日の資料をじっくり読んで、ビジネスに活用してほしい」と述べられました。
 セミナー終了後には参加者からの質問も相次ぎ、すでに来期の商戦にかける参加者の熱意が伺われました。



「ナゴヤコレクション サカエ ファッション サーキット」レポート

(C) KELLy
【開催データ】
開催日時:2007年11月24日(土)14:00、16:00、18:00
会場:松坂屋本店、名古屋パルコ、LACHIC
主催:NAGOYA COLLECTION 制作委員会(株式会社ドラムカンメディア内)
共催:KELLy(株式会社ゲイン)
プロデュース:株式会社ドラムカンメディア
後援:中京テレビ、ZIP-FM、BOOM NAGOYA
協力:ナゴヤファッション協会、株式会社ドリームアンドモア
URL:www.nagoyacollection.com/

名古屋のファッションムーブメントに火をつける!
人気ファッションスポット3ケ所で、時間差&オムニバス形式のファッションショーを開催。

 街路樹が美しく色づいた、秋たけなわの一日。連休を楽しむ人々で賑わう名古屋の中心部、栄のど真ん中で、ユニークなファッションイベントが開かれました。栄の人気スポット3ヶ所を繋ぎ、時間差・オムニバス形式でファッションショーを展開する「サカエ ファッション サーキット」です。
 これは“ファッションで名古屋の街を盛り上げよう"をコンセプトに2006年からはじまった「ナゴヤコレクション」のメニューのひとつで、店舗やブランドごとの仕掛けにとどまらず、コミュニティやネットワークを形成しながら街全体でファッションシーンを発信していこうというもの。名古屋・栄の百貨店と街全体を巻き込んだ新しいファッションコンテンツを提案し、「人」と「ファッションシーン」の新たなムーブメントを起こしたいと願う、名古屋で初めての試みです。

 皮切りは、松坂屋本店本館3階。長い売場通路を利用して、'07秋冬おすすめの6ブランドのコレクションが繰り広げられました。音楽にのってモデルが颯爽と登場すると、足を止めて見入る買い物客などで通路の両側はあっという間に人だかり。「ファッションショーなんて初めて見る」というOLや、「あの服、素敵!」と歓声をあげる母娘連れなどで賑わい、売場でのファッションショー開催という試みは成功を収めました。

 次なる会場は名古屋パルコ西館1階エントランスです。ショーのために手際よく設営されていくエントランスを見て、道行く買い物客たちも興味津々。「何がはじまるの?」と人の輪ができていきました。パルコ会場に登場したのは12ブランド。各ブランドのコンセプトや今シーズンのテーマ紹介に引き続き、売場も紹介されるため、「あとで寄ってみたいね」と楽しげに語り合う声も聞かれました。

 ショーの最後を飾るのは、ラシック1階ラシックパサージュ。広々としたスペースが観客でいっぱいになりました。吹き抜けになった上階からショーを見る家族連れなども多く、次々と登場するファッションとモデルに熱い視線が注がれました。
 3会場をハシゴしてまわったファンも見受けられ、普段なかなか間近で見ることのできないショーとユニークな仕掛けを心から楽しんだようです。

 夜には、ラシック1階を会場に仕立てて、ナゴヤコレクションのキックオフパーティが開かれました。関係者や一般顧客の皆様など400名ほどが集い、この日を皮切りにスタートする「ナゴヤコレクション」への期待を胸に活発な交流が行われました。



Vol.9 クリエーター交流会
「クリエーターズ ライブ! 2007 ROUND 1」


 
【開催データ】
開催日時:2007年11月6日(火)
     18:00〜19:30 トークライブ
     19:30〜20:30 フレンドシップパーティ
会場:7th Cafe(セブンス カフェ)
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル7F
ゲスト:勝井北斗さん、八木奈央さん(mintdesigns)
トークライブナビゲーター:小川孝智さん(nara storeバイヤー)
参加者数:101名

 東京コレクションで注目を浴びている、若いクリエーターの生の声をお届けする「クリエーターズライブ! 2007」。その第1回目の企画である今回は、2003年から東京コレクションに参加し、脚光を浴びている“mintodesigns(ミントデザインズ)" のデザイナーである、勝井北斗さん、八木奈央さんのお二人をお迎えして行われました。101名の熱心な参加者が詰め掛け、会場に若い熱気があふれる中、セレクトショップnara storeのバイヤー・代表である小川孝智さんのバイヤーとしての経験を活かしたナビゲートのもと、最新の'08S/Sコレクションのお話を始め、お二人の服作りにかける思いやクリエイションの原点などについて、お話をお伺いしました。

セントマーチンズで学んだのは「コミュニケーション」
 お二人が同じ時期に学んだCentral Saint Martins College of Art and Design について、意外なことに勝井さんは、「2〜3時間、パターンと立体裁断の授業があっただけであとは授業らしい授業はなかった。」とコメント。しかし、大学の裏に学生が経営するセレクトショップがあり、作ったものをそこで売ることができたり、クラスメートがビョークのスタイリストだったことが縁で、セントマーティンズの学生の服を彼女が着てTVに出てくれたりするなど、「いろいろな意味で社会との接点が多い」学校とのこと。そして、「学校で学んだのは『コミュニケーション』」だと言い切られました。

「服」というより、ひとつの「価値観」を作っている
 服を作ることの意味について、お二人は次のように語ります。「『服』を作っているというよりは、ひとつも『価値観』を作っているという意識」、「長いスパンで見たときに、洋服を通じてひとつの『価値観』を作り出せるブランドになりたい」、「センスのいい暮らし方の提案や志の高い人たちを増やす、こんなことに貢献できるといい」と。だから、「私たちは、『モード』や『ある種の特別の人のための服』を作っているつもりはない」とも話され、こういった服作りにかける思いが、ミントデザインズが幅広いファン層から支持を受けていることにつながっているような気がしました。

二人でやっていて良かったこと
 始め、一緒にブランドを立ち上げようという勝井さんからの誘いを断ったという八木さん。参加した学生さんからの「二人でやっていて良かったことは?」との質問に対し、「若い頃は『自分でやりたいと思ったらできるはず』と強気の気持ちだったが、それだけでは仕事はうまくいかない。相手のペースに合わせることも学んだ結果、工場との関係もうまくいくようになった。全部自分で決めていたら、こういう世界観は出なかった」と答えてくださいました。

 ナビゲーターの小川さんや参加した質問者の質問に丁寧に答えてくださるお二人の真摯な対応や、志を高く持ち続け、常に進歩を続けるお二人の姿に、参加者一同感銘を受けた交流会となりました。



「2008春夏ヨーロッパコレクショントレンド速報」セミナー

【開催データ】
開催日時:2007年11月1日(木)13:00〜16:30
会場:デザインホール
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル3F
講師:藤岡篤子 氏(ファッション・ジャーナリスト)
受講者数:340名

柄もシルエットも大きく変化。
エアリーなフォルムに、グラフィックで大胆なアート感覚が新鮮。


 毎回、ヨーロッパのトレンドをいち早くつかみ、商品企画に生かす指針を与えてくれると定評あるセミナー。今回も、アパレル・リテイラーなどのファッション関係者で満席となりました。
 藤岡篤子氏はまず、コレクションの全体傾向には、3つのポイントがあると分析。一つめは、張りやスケ感のあるものや、主張・強さのある花柄などの「素材」。二つめは、身体を締めつけず、軽さ・薄さを感じる「パジャマドレッシング」。今シーズンは、リラックスしてもテーラードというスタイルが台頭し、ジャージー・スエットといった素材が使用されています。三つは「アートからのインスピレーション」。モダンアートからインスピレーションを得たデザイン、'50年代〜'60年代のアメリカンモダンアート黄金期の影響を受けたものが多く、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ジャスパー・ジョーンズなどのアーティストにインスパイアされた作品が多かったとのことでした。

 カラーのトレンドは、「ブルーからグリーンの海底の揺らぐような色」「繊細で淡い感じのベージュを組み合わせたミネラル・サンドカラー」「ディーバのピンク」など、同系色の配色が多いのが特徴。また「今シーズン気になるのはカーキ色」「ブラックは全体に減ってきたが、トレンドの中にあるエレガントブラックや、プラチナ系・シャンパンゴールドも健在」だということでした。
 薄くても立体感のあるフォルムが美しい「ロマンティック・スカルプチャー」、飛沫柄・ブラッシュストローク・ターゲット・アニメイラストなどの「アートペインティング」が多いのも今シーズンの特徴だそうです。「どこの国というよりも、いろいろな要素を組み合わせた可愛らしいエスニック」「ネイティブアメリカンを思わせるフリンジや羽根のアクセント」などもニュートレンドだと述べられました。
 素材では、プレッセやリネン、クロケット&メッシュやジャージー・スエット。エスニックな柄やアニマル柄、星、ストライプ・ボーダーをはじめ、植物柄やコクのある油絵風のフローラル柄も多く見られ、洋服をカンバスにしたようなモダンアート、揺らぎの雰囲気のあるグラデーションも目立ったとのことでした。
 大きな流行の流れからキーアイテムやディテールに至るまで、いつもながら的確で細かな藤岡氏の分析は来春の商品企画・開発の大きな指針となるとあって、会場では熱心にメモを取る人の姿が見受けられました。

 続いては、恒例の「バイヤーとジャーナリストによるランキング」と「ミラノ・パリのプレタポルテコレクション」を紹介。今シーズンのデザイナー交代の話題に始まり、現地の事情に詳しい藤岡氏ならではの情報が伝えられました。
 ロックフェスのようなショーを開いた「D&G」、作品の草花柄をそのまま会場全体にフレスコ画として描いた「プラダ」、グラディエーターのように強い女のイメージを打ち出した「ジバンシー」、清潔感ある可愛いラブ&ピースで'70年代の雰囲気にあふれた「ズッカ」など、28のミラノコレクションと31のパリコレクションについて、一つ一つ丁寧に解説。ショーだけでなく展示会などで作品に触れた率直な感想なども語られ、参加者たちは熱心に耳を傾けていました。


2008年春夏NYコレクション速報と米国ファッションビジネス
NY百貨店に習う、売れる服とは?デザイナー、MD、バイヤー必須講座!!


【開催データ】
開催日時:2007年10月12日(金)13:30〜15:30
会場:アイリス愛知 2F コスモス
名古屋市中区丸の内2-5-10
講師:宇自可 伶 氏(ニューヨーク在住・ファッションプロデューサー)
受講者数:133名

 過去2回の講演が大好評を博した、ニューヨーク在住、宇自可伶氏を迎えてのホットなNYファッション情報セミナー。冒頭は、ソーホーにある宇自可氏のオフィスの前に建設中のモダンなレジデントビル「トランプタワー」の話からはじまりました。
今、アメリカの若きITや投資家系の人々が、ソーホーに住みはじめているそうです。彼らが生み出すニュー・マネーの動きと、どういうモノを買うのか−。そして、その真似をする女の子のことなど、「アメリカのコレクションは、お金(経済)の流れを知らないと理解できない」とのこと。
 「ニューマネーを生み出す人々はマテリアリスティックで、高いものが好き」「その心理を知らないとモノは売れない」と、まさに今のアメリカを知る宇自可氏ならではのホットな話題に、参加者は皆、引き込まれてしまいました。
 宇自可氏は、「うまいバイヤー」とは「モノを売る人」だと言い切り、アメリカの百貨店の現状を、大手百貨店サックスの成功を例に解説。顧客のニーズを知る大切さを説かれ、「みんながモデル気分。でもモデルじゃない、ということを踏まえて、<フィット感=やせて見える>服をつくる必要がある」と指摘されました。

  続いての、NYで気になる新しいショップの紹介と、「2008年春夏NYコレクション」の報告では、「大企業スポンサーがお金もモノもたくさん出している。デザイナーやお金を集めるのもうまい」「バイヤーはデザイナーにいろいろ要求して、売り上げを上げていくのがうまい」と分析されました。
 NYコレクションの今回のテーマは、セレブ感あふれる「お嬢様ヒッピー」、60年代風「シースルー」、洗練された「アフリカントレンド」、「ラブ&ピース」など。今度は、プリントが「来る」とのこと。
 アメリカは「社会的にみんなが求めているものがファッションになっている」と語り、各デザイナーのコレクションをトレンドごとにまとめながら丁寧に解説され、「服が売れるコレクションは、NYコレクション。パリ、ミラノは靴・バッグが多い」「NYコレクションは、新人を発掘して、うまくビジネスに結び付ける場。日本のアパレルや輸入代理店も考えてみられては」と提言されました。

  最後にデザイナーごとのショーの様子を紹介され、「コレクションをどうこなすとよいのか、売れるのか、を中心に分析した。売りやすいトレンドなので、ぜひ参考にしてください」「カラーが山になり、プリントがピークになる。プリントは長く日本にきていないので、ぜひ売っていただきたいと思います」と語りかけられました。


ナゴヤファッションコンテスト2007公開審査・発表会

【開催データ】
開催日時:平成19年9月14日(金)1st 13:00〜/2nd 16:00〜
会場:デザインホール
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル3F
審査員長:花井幸子(ファッションデザイナー)
審査員:中野裕通(ファッションデザイナー)・原由美子(スタイリスト)・桑原直(ファッションデザイナー)・岩谷俊和(ファッションデザイナー)
来場者数:1st 477名/2nd 423名

ますます完成度が高まり、手の込んだ作品が多かったと高評価。

 今年で27回目を迎え、海外からの出品国数も過去最多となった本コンテスト。会場は、熱心な若い学生たちの立見であふれました。最終審査にノミネートされたのは31作品。出品者たちが緊張の面持ちで見守るなか、ファッションショー形式による審査が始まりました。
 5人の審査員は、作品をじっと見つめ、厳しい表情で審査を進めていきます。3ヶ月前の第一次審査のとき、「このデザイン画がどのような実作品になるのか楽しみ」と話していた審査員たち。その評価が気になるところです。

 審査結果の発表にあたっては、まず、ナゴヤファッション協会の磯村辰生副会長が「年々、コンテストへの高い評価を得ている。どの作品も若い皆さんのファッションにかける熱い思いや独創性が感じられた」と挨拶されました。
 シルバー賞3点のうち1点はキッズ。可愛い子どもモデルの再登場に会場から拍手が送られました。続いてゴールド賞2点が発表・表彰されたあと、グランプリに輝いたのは鷺森アグリさんの「デニム浴」という作品。「木の下に入ると影ができる。それをレースで創れたら・・・と思ったのがきっかけ。カットワークがポイント。手縫いなので大変でした。着る人も見る人も、そして自分もドキドキできるような服を創っていきたい」と語ってくれました。

 審査員からは、「全体的に大変手が込んでいた。テクニックや素材が素晴らしい。全体のバランスとフォルムにも、もう少し気を使うと、もっと良くなるのでは」(岩井氏)。「いつもにも増して子供服が良かった。完成度が高く、印象的だった」(桑原氏)。「(受賞されず)今まだ座っている方の作品にも、好きなものがたくさんあった。いろいろなタイプの作品があり、時代を反映している。完成度の高さをめざしているのはわかるが、どこかで引き算を。一方、シンプルをめざす場合は、もう一つ何か足りない」(原氏)。「デザイン画を見て、『この作品はどう仕上がってくるのだろう』と楽しみにしていた。絵の表現力に比べると、まだ作品の表現力が足りない」(中野氏)。と、鋭い寸評が寄せられました。
 最後に花井審査員長から「応募から5ヶ月。日がたつことの恐ろしさを感じた。世の中が流れる速さのせいか、自分の思いもどんどん変わっていく。全体に少し装飾過剰ではないかという気もした。グランプリ作品は形がシンプル。装飾が多すぎると感じるのは、時代のスピード感からくる誤差なのかもしれない」と、つねに時代の最前線で活躍し続けるクリエーターならではの深い考察と分析がなされました。
 年々、作品のクオリティが高まるコンテスト。さて、来年はどんな作品が寄せられるのか、いまから楽しみです。

審査結果はこちら→



Vol.8 クリエーター交流会
「イタリアにおける靴のモノ創りの現場とビジネスについて、そして、これから…」


【開催データ】
開催日時:平成19年8月21日(火)
18:00〜19:30 セミナー/19:30〜20:30 カジュアルパーティー
会場:7th Cafe(セブンス カフェ)
名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク・デザインセンタービル7F
講師:深谷秀隆 氏(イタリア在住、靴職人)

 今回のクリエーター交流会は、イタリアフィレンツェで活躍中の地元出身の靴職人、深谷秀隆さんをお迎えして、イタリアでの靴作りの現場とビジネスの現状をお話いただき、地元の伝統産業にたずさわる職人の方々を始め、第2・第3の深谷さんを目指そうとする若手のクリエーターなど70名が参加しました。

海外に初めて、ビスポークのショップを開いた日本人
 深谷さんは名古屋モード学園在学中、靴作りの基本を学び、在学中から「ナゴヤファッションコンテスト」を始めとする数々のコンテストに上位入賞を果たされました。卒業後は「Kensho Abe」のブランドデザイナーを経て、再び靴作りを学ぶためにイタリアに渡り、1999年ブランド『il micio(イル・ミーチョ)』を立ち上げられました。その後、フィレンツェの老舗セレクトショップ『Tie Your Tie』のデザインを手掛けながら、2005年には、自らのショップをオープン。現在は、日本のセレクトショップ『TOMORROWLAND』とのプレタシューズのデザインも手掛けます。
 2007年放映のNHKドキュメント『ファーストジャパニーズ』では、海外にビスポーク(注文靴)のショップを初めて開いた日本人として紹介されました。
また、交流会当日は、新しく深谷さんが開発された技術として、ワニ革をスウェードに見えるように加工した靴の実物をお持ちいただき、紹介していただきました。

人間関係の大切さを強調
 「ものづくりが好きな父の影響で幼い頃から兄弟とモノ創りに関わっていた。」という話でセミナーを始めれた深谷さんですが、これまでの靴づくりの人生の中で、人間関係を大切にしてこられたとのこと。
 このセミナーにも、深谷さんが、名古屋モード在学中に師事された、名古屋のシューズメーカー、(有)gracesの松田繁太郎氏も駆けつけられ、当時の深谷さんの印象を、「ものすごくしつこくて、鋭い人。」と話される場面もあり、会場も大いに盛り上るとともに、人間関係や人との出会いを大切にしてきた深谷さんのお人柄が表れたひとこまとなりました

『好き』という言葉のパワーを大切に
 「世界的に認められる靴職人になりたい。『イル・ミーチョ』の靴を履いて街を歩いていると、『イル・ミーチョ』の靴だね、と言われるように。」と自らの靴づくりへの思いを語られる深谷さん。最後に若手クリエーターの方々に向けての次のようなメッセージで、このセミナーを締めくくられました。「名古屋モードの当時の学長さんの言葉ですが、モノ創りも、生活も、恋愛も、『好き』という言葉のパワーを大切にして欲しい。モノ創りが好きな人は、特にもモノ創りが好きだという気持ちを大切にして欲しい。」と。



平成19年度上期インターンシップ事業報告

 ファッション業界の優秀な人材を育てるため、愛知県服装学校協会及びナゴヤファッション協会会員企業のご協力の下、今年5月にスタートした、「19年度上期インターンシップ研修」は、14社で37名に参加をいただき、無事8月末にて終了いたしました。ご協力いただきました企業、学校の皆さまには心よりお礼を申し上げます。
 「下期インターンシップ研修」については、ただいまご参加をいただく学生の方を募集中です。皆様方の積極的なご参加をお待ちしております。なお、ご関心のある学生の方で、内容・期間・締め切り等詳細をお尋ねになりたい方は、学校窓口を通じて、愛知県服装学校協会事務局(TEL:052-936-0661)まで、お問い合わせをお願いします。

インターンシップ報告会/タキヒヨー(株)

【開催データ】
開催日時:平成19年7月27日(金)14:00〜16:40
会場:タキヒヨー(株)12階 大会議室
参加者:インターンシップ研修生5名、研修生の指導にあたった社内スタッフ4

進行:白木賢治(タキヒヨー株式会社人材開発部)

 7月2日(月)〜27日(金)までの間、2週間〜4週間にわたり5人の専門学校生が、アパレル、テキスタイルの各部門において就業体験し、研修最終日の27日(金)、全体報告会に臨みました。
 報告会では、研修生一人ずつ順番に7分間のプレゼンテーションを行い、配属先の概要、取り扱い商品などを説明し、続いて、配属先の就業体験をもとに作成した企画提案を発表。その後、研修生を指導したスタッフからコメントが寄せられました。
 指導したスタッフから、「プレゼンに向けて十分に準備していただいたことが伝わった」、「できるだけ相手の顔を見て話すことが大切」、「素材の説明があるともっと良かった」、「トレンドの分析に基づいて説明するとより良かった」などのコメントが寄せられました。
 期間全体の振り返りの中では、研修生から「社会人としてのマナーを身につけることの大切を学んだ。」「さまざまな場面での内外の人への挨拶の仕方など、インターンシップを通して具体的に教えてもらい、勉強になった。」「サンプルチェックの過程から、コミュニケーション、特に具体的に指示をすることの重要性を学んだ。」「企業デザイナーの仕事は絵を描くだけではなく、奥の深い仕事だと感じ、勉強になった。」といった実感のこもった感想をのべ、このインターンシップ体験がそれぞれの研修生にとって有意義なものであったことが感じられました。
 最後に、インターンシップ担当者から、「一人ひとりが目標を持ってやって頂き、今自分に何が足りないのかを分かるきっかけとなり、今後足りない部分を学んでいって欲しい。インターンシップを通して、企業で実際に働く現場や雰囲気など、学校で経験できないことを学んでもらった事を、今後の糧にして下さい。」と参加した研修生たちへのメッセージで報告会は終了しました。


平成19年度上期インターンシップ事業報告

ナゴヤファッション協会では、ファッションを専攻する学生さん達にファッションに関わる企業での就業体験の機会を提供して、学校で得た知識・技能をさらにスキルアップしてもらったり、学生さん達に職場に対して正しい理解をしてもらうため、昨年度より、インターンシップ事業を開始しました。今年度上期のインターンシップは、昨年度よりも実施企業数が増え、14社で37名が参加して実施中です。

<受入れ協力企業・14社>
猪村工業株式会社/株式会社エフリード/株式会社オンワード樫山/クロスプラス株式会社/三永株式会社/株式会社ジュニアー/株式会社鈴丹/瀧定名古屋株式会社/タキヒヨー株式会社/株式会社二葉/万兵株式会社/株式会社名鉄百貨店/モリリン株式会社/株式会社リオ横山

<参加学校・7校>
愛知文化服装専門学校/明美文化服装専門学校/専門学校慈恵きものファッションカレッジ/中部ファッション専門学校/名古屋ファッション専門学校/名古屋服飾専門学校/豊橋ファッション・ビジネス専門学校

インターンシップ報告会/(株)ジュニアー

【開催データ】
開催日時:平成19年7月2日(月)9:00〜12:00
会場:(株)ジュニアー 2Fホール
参加者(敬称略):
(株)ジュニアー 総務部人事課取締役部長 渡辺正男
(株)ジュニアー リリアンビューティーエクラ チーフパタンナー 課長 舟橋由美子
(株)ジュニアー ネイプル チーフデザイナー 次長 高橋久恵
愛知文化服装専門学校 アパレル技術専攻科3年 佐藤真友子
明美文化服装専門学校 服飾家政専門課程服装科プロフェッショナルコース4年 久保田芳
名古屋ファッション専門学校ファッションスペシャリスト科3年 磯貝佳弘
名古屋ファッション専門学校ファッションスペシャリスト科3年 狩谷華澄
名古屋ファッション専門学校ファッションスペシャリスト科3年 柴田香奈
名古屋ファッション専門学校ファッションスペシャリスト科3年 村瀬 恵
中部ファッション専門学校 ファッション産業学科ファッションビジネスコース3年 長内瑠美
中部ファッション専門学校 スペシャリスト学科アパレルパターンコース3年 高橋いつか
報告会の流れ:1. 製図(パターン)の反省会
報告会の流れ:2.デザイン画の反省会
報告会の流れ:3.総括反省会

8名の参加学生がそれぞれの手ごたえを感じることができた2週間

 6月18日〜7月2日まで2週間にわたりインターンシップが行われた(株)ジュニアーでは、今年も最終日に報告会が行われました。

1.製図(パターン)の反省会
 各学生が制作した製図(パターン)について、チーフパタンナーの舟橋課長より、「学校で教えてもらったことを基本にしつつ、素材やシルエットを踏まえて、パターンを考えて欲しい」、「企業では、コストや海外生産を前提としているかなど、ブランドの特徴を踏まえて、縫製のしやすいラインを心がける事が必要」など、1点1点丁寧で鋭い指導が行われました。また、学生たちも緊張した面持ちでプレゼンテーションを行ったり、指導の一言一言に耳を傾け、熱心にメモを取るなどしていました。

2.デザイン画の反省会
 やはり学生たちが制作したデザイン画について、チーフデザイナーの高橋次長から、「デザイン画は、リアルすぎてもおしゃれ感がないので、少し大げさに書いた方がよい」、「ヘアスタイルやくつ、アクセサリーなどの小物による演出も大切である」、「スタイリングのポーズは雑誌を参考にすると良い」など、数々の実践的なアドバイスや指導が行われました。

3.総括反省会
 人事課の渡辺取締役部長より、それぞれの学生さんのインターシップの目標とその成果について、質問があり、それぞれの学生さんの回答は…。
・企業でどうやって服が作られているか知りたかった。また、アパレルは女性がメインといわれているが、男性はどのようにして働いているのか知りたかった。どちらも今回のインターンシップで目標が果たせて良かった。
・デザイナー職として実際にどのような仕事をしているか、Lサイズの人のデザイン展開についても知りたかった。特に、モデルに着てもらう商品チェックの場に立ち会えたことが、参考になった。
・職場の雰囲気というものが知りたかった。また、デザインからパターンの工程、デザイナーとパタンナーの仕事の違いが知りたかった。デザイナーとパタンナーの仕事の両方にバランスよく関われたことが良かった。
・実際に企業がどういう流れで動いているか、商品がどういう風にあがっていくか、知りたかった。製品になるラインの引き方が見たかった。インターンシップに参加したことにより、ラインの引き方が上達した。
・イレギュラーサイズのパターンの引き方、企業の中で商品が出来る流れを知りたかった。
・高級素材を手に取ることができ、貴重な体験ができた。
・企業の組織や仕事の流れが知りたかった。商品企画部門とパターン部門の両方の雰囲気の違いを学べて、勉強になった。
・パタンナー志望だが、パターンとデザインは関係が深く、両部署を見ることができて、両部署間の連携について学べた。

「職場の人たちに感謝の気持ちと挨拶を忘れずにね」と言われて、自然とうなずく学生たちの姿が印象的で、人事部門から現場に至るまで、会社をあげて積極的にインターンシップに取り組んでいらっしゃること、学生さんたちも真摯に与えられた課題に取り組み、インターンシップに手ごたえ感じていることが、報告会からも伺うことが出来ました。


「ナゴヤファッションコンテスト2007」第一次審査レポート

【開催データ】
開催日時:平成19年6月15日(金)13:00〜15:30
会場:ナディアパーク・デザインセンタービル6F デザイン工房
審査員長:花井幸子(ファッションデザイナー)
審査員:中野裕通(ファッションデザイナー)・原由美子(スタイリスト)・桑原直(ファッションデザイナー)・岩谷俊和(ファッションデザイナー)
応募総数:5,018点(レディース3,758点/メンズ669点/キッズ591点−うち海外からの応募点数301点)
第1次審査通過数:31点(レディース18点/メンズ6点/キッズ7点)

年を追うごとにレベルアップ!9月のグランプリは誰の手に。

 若いデザイナーの独創的な感性が集結する「ナゴヤファッションコンテスト」の審査がいよいよ始動。今年は国内・海外含めて5,018点の応募があり、去年にも増してハイレベルな戦いが繰り広げられることとなりました。
 膨大な数の応募作品を、個性豊かな5人の審査員が鋭い視点と感性でチェック。素材を貼り付けたりイメージ画に工夫を凝らしたり多彩なデザイン画が広げられたテーブルの上は、デザインの花が咲いたように華やいでいました。
 審査員たちは時折、「このデザインがカタチになったところを見てみたいね」「これ、どうなっているんだろう?」と、興味深げに画(え)を覗き込んで会話を交わしながら、スピーディに審査は進みました。
 最終絞込みの段階では、審査員が決められた枚数の付箋を作品に貼っての投票が行われ、同数票の作品を前に「こっちは可愛い男の子に着せてみたいね」「こっちも新鮮でいい」などと協議する場面も見られました。
 今回の第一次審査を通過したのは、レディース・メンズ・キッズあわせて計31点。このデザイン画から、どのような作品が登場するのか−。9月14日の最終公開審査が、心から期待されます。
詳しくは→


平成19年度 ナゴヤファッション協会 第1回理事会・通常総会・セミナー・交流会 開催レポート

【開催データ】
開催日時:平成19年6月13日(水)9:30〜13:30
会場:KKRホテル名古屋(名古屋市中区三の丸一丁目5-1)

設立20周年を記念して、志も新たにスペシャルセミナーを開催。

理事会・総会
 設立20周年を迎えたナゴヤファッション協会。今年の理事会は、岡田邦彦会長(株式会社松坂屋 代表取締役会長)の「20周年を機に全面的な見直しを行い、画期的な取り組みができた」というあいさつではじまりました。平成18年度の事業報告、収支決算の報告・承認に続いて、平成19年度の事業計画、収支予算、役員選任が承認されたあと、会場を移して、平成19年度ナゴヤファッション協会通常総会も開かれました。岡田会長が「名古屋は元気だといわれるが、名古屋のファッションはどうか。これからも“若手の育成”を大切にした事業を軸とした展開をしていきたい」と挨拶。
 議事も滞りなく承認され、中部経済産業局の辻信一産業部長からは、「“衣”は人に満足や喜びを与える仕事。人間の感性・感覚を大事にして、鋭い感覚を持った若手がどんどんでてくることが重要」との祝辞をいただきました。

設立20周年スペシャルセミナー
「日本のファッションビジネスに必要な国際化の視点について」

講師:太田伸之 氏
(株式会社イッセイミヤケ 代表取締役社長、ファッション戦略会議委員、ジャパン・ファッション・ウィーク実行委員)

 今回は、ナゴヤファッション協会設立20周年を記念するスペシャルセミナー。ここからは一般参加の皆様も加わり、会場は満席となりました。
 まず、官民様々な機関で長くデザイナーを見て育ててきた経験に基づき「日本の漫画やアニメ、音楽などを世界が文化として認めはじめている。これからはファッションをどう育成していくのか」との問題提起にはじまり、「若い日本のデザイナーにチャンスを与えていこう」「109は、パリコレではなく渋谷の街を見てつくられている。これも日本の文化の一面であり、いろんな日本の面白さをもっと世界に伝えていこう」とのメッセージを発信。「これからの主要マーケットはアジア。サイズも日本のままで展開できる」とアジアへの関心の高さもうかがえました。
 そのうえで「日本には、“超ハイテク”と伝統織物など“超ローテク”が共存している。テキスタイルも含め、日本の優れた技術を世界に知らしめよう。それぞれの業界が『自分たちは何をすべきか』を考えるべき」と会員企業はじめ参加者へ強く訴えかけられました。
 太田氏率いる(株)イッセイミヤケが'80年代のやり方と決別し、緻密な販売計画のもとで地域や店によって異なるマーチャンダイズをロマンと夢をもって実行している例や、新ブランド NAOKI TAKIZAWAの展開例をあげ、「ジャパンブランドの大きな課題は、世界に通用する“高いクオリティの雑貨”と“プレシーズンコレクション”の実施」と言明。「お客様の目線に合わせた新しい考え方で世界に通用するビジネスをしなければ、世界で生き残れない」と強く述べられました。

交流会
 セミナーの後は会場を移し、太田氏も参加されての交流会が開催されました。名古屋市民経済局長谷川局長の挨拶、磯村辰生新副会長(万兵株式会社 代表取締役社長)の乾杯の音頭に始まり、活気あふれた交流が行われました。